スマートフォン全盛の現代においても、私たちは腕時計に惹かれる。針が刻む「時の流れ」は限られた時間のどこにいるのか一目瞭然、これからの過ごし方をも予想させる。歴史と物語を持ち、ともに長く歩めるタイムピースをここにご紹介する。
旧さではなく永らえる。それが不動のクラシック
いまわれわれの前にあるクラシックな腕時計は、時代に淘汰されることのなかった、本当の名品である。多様性が淘汰を経て優れたものが普遍性を持った、クラシックとはそういうことだ。旧さではなく永らえ得たことに意味があり、その理由自体が価値であること。クラシック音楽や名画と、腕時計も一緒である。
小津安二郎の懐には、いつも英国王室御用達の懐中時計があった。松竹で撮った自作を大映でリメイクした際にはスイス製最高級腕時計を社長から贈られ、その後は日常使いした。流行りのシネマスコープにはいちども手を出さず、スタンダードサイズで撮り続けた映画作家。一生ものの時計は、不動のスタイルの矜持を共有する。
クラシック、かくあるべし。揺るぎない様式と倫理は、腕時計から失われてはならないのである。
文=並木浩一(桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリスト)
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source : 文藝春秋 2024年1月号