戦後80年にあたる今年は、戦争にまつわるテレビ番組や映画、書籍などが数多く制作され、例年以上に戦争について考えた方が多かったのではないでしょうか。
私もその一人で、早坂隆さんの『「A級戦犯」子孫たちの80年』を担当したことを機に、改めて戦争、そして自分自身の先祖と戦争との関わりについて深く思いを巡らせた夏でした。
私の曾祖父・天羽英二がA級戦犯容疑者として巣鴨プリズンに勾留されていたことを知ったのは、高校生の頃だったと思います。以前から曾祖父が外交官で、「天羽声明」と呼ばれる欧米から批判を浴びた声明を出したことは知っていましたが、WikipediaでA級戦犯容疑者であったことを知り、当時は「やはり曾祖父はとんでもないことをしてしまったのかもしれない」と衝撃を受けました。

しかし今回の取材の過程で、早坂さんの取材に同行したり、曾祖父の資料を読み込んで、曾祖父が戦争について慎重だったことや、戦後も戦争を止められなかったことへの責任を強く感じていたことを知りました。
そしてなにより痛感したのは、A級戦犯として起訴されたか、あるいは不起訴となったかによって、その家族が背負う重荷が想像以上に異なるという点でした。
A級戦犯として処刑された7人のひとり、土肥原賢二氏の孫・佐伯裕子さんのお話は、特に胸に残りました。賢二氏を敬愛していたという裕子さんのお父様・実さんは、戦後しばしばお酒を飲むと「おとうさーん」と叫んで泣き崩れたといいます。

当時は戦争によって家族を亡くした人が数多いたとはいえ、処刑され、世間からは戦犯と非難され、その家族までが差別の対象となり苦しんだこと。そして、多感な時期にお父様のこうした悲痛な叫びを聞かなくてはいけなかった裕子さんの心中は、計り知れません。
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