それは突然の豹変でした。

「あなた、職業なに？」

　埼玉県川口市の資材置き場などが集まる地域。その中にポツンとあるお店でケバブを食べていると、それまで楽しく雑談の相手をしてくれていたクルド人男性が、誰何してきました。

　お店の雰囲気に馴染んでいるつもりだった私は、すっかり油断していて、動揺してしまいました。ノンフィクション作家・八木澤高明さんのルポ「東京外環の日本を学ぶ移民たち」（2025年9月号）の取材に同行し、ふらっと訪ねた1軒目の出来事です。

　東京中心部から半径15キロの半円状に広がる外環道。その周辺に次々誕生している外国人コミュニティに住んでいる人々はどんな生活をしているのか。そんな素朴な興味から始まった取材でしたが、実際に動き出すと、クルド人問題が過熱し、さらには外国人問題が国政の課題に挙がるようになり、冒頭のような緊張感のある取材になったのです。

　八木澤さんは、この機を見逃さず、男性とすかさず取材の交渉。いつの間にか男性と打ち解けて一対一の取材態勢に。そのまま1時間ほど話し込んでいました。そこから丁寧に取材を重ね、彼の逮捕、さらには強制送還を見届けることになります。詳細は本編に譲りますが、その言葉から、難民申請中の仮放免という立場の問題、クルド人の間の世代間格差など、彼らからみた問題意識が見えてきます。

外環道の“日本人ウェルカム”なスーパー

　もう一つ、取材で印象的だったのは埼玉県三郷市にある「ボンゴバザール」。八木澤さんから「面白いので、ぜひ一緒にいきましょう」と誘われていたスポットです。

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