たやすく滅びてしまう町や村
水上勉の『五番町夕霧楼』という作品を読み、舞台となった京都の遊郭跡地を訪ねたことがあった。
このあたりだろうと、見当はついたのだが、ちょうど地元の人であろう老女がいたので、思い切って尋ねたところ、きつい口調で言い返された。
「遊郭があったかやて? そんなもの知りまへんな。なんで、あんたはん、そんなこと調べてはるの?」
歴史には触れていいものと触れてはいけないものがあることを、身を以て知った瞬間だった。
前者には光があてられ、後者は隠される。だが、消えゆく運命にあるものを惜しむ思いに、私などは駆られる。
おそらく、本書『忘れられた日本史の現場を歩く』の著者も、同じ思いを持つ人なのであろう。
著者は北海道から九州まで歩き、隠れた日本の歴史を記録した。
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source : 文藝春秋 2024年9月号