「僕の前立腺がんレポート」を連載中だった長田昭二さんが、6月14日に逝去された。「一人の人間ががんになって、命を落としていく過程を知ってほしい」と語っていた長田さんの遺志を受け、文藝春秋編集部ではご親族の了承を得て、闘病生活にかかわった方々のインタビューを連載番外編としてお届けします。
番外編第2回、第3回では、主治医だった東海大学医学部腎泌尿器科学領域主任教授の小路直(すなお)医師に、長田さんの闘病生活について聞きました。後半となる今回は、長田さんの終末期について振り返ります。
■連載「僕の前立腺がんレポート」
第24回 “余命半年”を使い切った僕は、足の痛みで杖が必要になった
第25回 貧血で階段が上れない…がん末期の体調不良は突然やって来た
(訃報) 「僕の前立腺がんレポート」連載中の長田昭二さんが逝去されました
番外編第1回 どうやって「念願の自宅で最期」を迎えることができたのか〈親族インタビュー〉
番外編第2回 闘病記を書かれる主治医の気持ち〈主治医インタビュー〉
番外編第3回 今回はこちら

なぜGWから急激に悪化したのか?
――2025年に入っても、2-3月に香港に行くなど、息切れなど体調不良はありつつも比較的元気で過ごしていました。それが、ゴールデンウィークあたりから急激に悪化した印象があります。
小路 長田さんとは、私も2025年4月に個人的に食事をしているんです。その頃にはすでに「食べられない」とおっしゃっていましたが、イタリアンのコースを完食された。ワインも飲んでいました。
ところが、5月の連休ごろから痩せ始めた。「リュープリン」というホルモン療法の注射を打っていたので、本来は太るはず。「痩せる」のは危ないサインでした。5月には、画像上の転移巣も少しずつ大きくなってきていて、血液検査のCRPという炎症の所見、その炎症の影響で血液が固まる力を示す凝固能の数値も高くなっていました。
一方で、腫瘍マーカーのPSAの値は徐々に上がってはいるものの、そこまで上がっていなかった。末期になると劇的に上がる方もいますが、がんの悪性度が高いとPSAが大きく上がらないこともある。長田さんは後者のケースだったのかもしれません。

――そもそも、長田さんはなぜ痩せたんですか?
小路 やはり食事が取れなくなったからだと思います。
――例えば、長田さんが入院して、点滴で栄養を取っていれば改善した可能性はあるんでしょうか?
小路 一時的にはありえます。外来では、点滴以外にも、缶入りの高カロリー飲料を経口で飲んでもらう話も提案したんですが、そういう食べ物には頼りたくなかったようです。
――連載を読んでも、春先になると、まともに食事が取れていなかった様子がうかがえます。
〈4月に入った頃は、コンビニ弁当を1日かけて食べる――という感じだったが、いま(4月29日)は2日に1回おにぎりを1個食べる――という感じだ。当然空腹にはなるし、つねにお腹がギュルギュルと鳴っているのだが、弱い吐き気が「食べる」という行為を阻止するのだ。〉(「僕の前立腺がんレポート」第24回)
小路 食事がとれないと身体の中のバランスが崩れるんです。さらに長田さんの場合、がんが骨にも転移していて、血液は骨髄で作られますから貧血がゆっくり進行していた。加えて、がんの量が増えるとがん細胞から出てくる炎症性の物質も増える。身体の中のバランスを崩す要素がいくつもあったわけです。
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