プーチン・習近平・金正恩……先ごろ中国で見られた異例の3ショットは、絵面はもちろん、中継マイクが偶然拾った三者の“世間話”が何とも強烈だった。「バイオテクノロジーの発展で人間の臓器は継続的に移植できるから、人はどんどん若返って遂には不死さえ叶うらしい」とプーチン氏が言えば、「今世紀中に150歳まで生きられる可能性がある」と習氏。この場面で“不老不死”のための臓器移植の話題が持ち上がるとは! 今後さらなる記録的な長期政権を狙うトップ達ならではの会話である。
この“身の毛もよだつ方法”自体は言語道断としても、不老長寿がにわかに現実味を増しているのは紛れもない事実。世界中の大学やベンチャー企業が競う形で、医学的なアンチエイジング研究が急ピッチで進んでいるのだ。研究の過熱ぶりは、「10歳若返り」で賞金総額150億円を競う世界最大級の抗老化技術コンペティションが開催されるほど。準決勝に残った40チームのうち6チームが日本勢なのも心が躍る。ともかく医学が老化回避に本気になり、事態が一変した。
それはハーバード大学のシンクレア教授の著書『ライフスパン 老いなき世界』が「老化は宿命ではなく、治療できる病気である」と主張したのがきっかけ。今やこの考え方が主流になりつつあり、アメリカの大富豪は専門家30人をつけ、ありとあらゆる方法を駆使して180歳まで生きることへの挑戦を進めている。
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)など予告編に過ぎないような本格的な老化治療薬が処方されるまで、あと10年とされたが、世界中の大学やベンチャー企業の研究が進み、その結果、実際にはあと数年で実現しそうだ。“老化細胞除去”もサプリや化粧品でなら、もう市販されている。その位、猛烈なスピードで研究が進んでいるのだ。
10年後にはもう本当に世の中がひっくり返るほど変わっているかもしれない。100年寿命は医学的な進歩から“避けられない未来”となり、そこまで生きたくなくても生かされる時代がやってくるだろう。ならばスーパーエイジャーと呼ばれるほど溌剌たる100歳を全うすべき。今やQOLを高めるどころか、周囲をびっくりさせる若さも全く不可能では無いのだから。いや既に令和の中高年は、精神的にも見た目的にも実年齢×0.7歳を生きている。つまり60歳が42歳感覚! 10年後に×0.6歳になるのは必至。
女性も更年期以降「いわゆる閉経後にこそ黄金期がやって来る」という説を体現するように、50代から別人のように元気になる人が今や続々と現れている。そこで寿命100年時代の美容提言を『年齢革命 閉経からが人生だ!』という1冊にまとめた。少なくとも今、社会が考えるより生身の高齢者の方がずっと先を行き、人類として進化していることを伝えたくて。つまり一番のアンチエイジングは「自分はまだ老いていない」と気づくこと。

多くの人はこれまでの古い年齢観にわざわざ自分を当てはめ、数字の通り歳をとっていくという形になりがちだった。「閉経後の女性は女でなくなる」的な偏見含みの誤解も生きている。実際、かつては閉経するともう寿命が近づいていたから、致し方ないことだが、今はそこからが本番とも言えるほど長い長い人生後半が待っている。そのことを忘れてはいけない。そして100年寿命は人生はもちろん、人間の生理も変えてしまうことに早く気づくべきだ。だから今後は医学的アンチエイジングは、人類共通のテーマとなる。毎年のように不老不死の新しい“治療法”が生まれることから目を離さないでほしい。ただ治療薬は高額を極めるはずで“金持ちほど若い”という新しい格差社会が生まれてしまうかもしれないことは、心配でならないが。
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