歌人で気鋭の批評家でもある著者は、『をとめよ素晴らしき人生を得よ』で先行する女性歌人の活動を、戦後にできた「女人短歌会」と歌誌「女人短歌」を軸に、ダイナミックなノンフィクションとして描き出す。

　タイトルは葛原妙子の歌から。葛原のような著名な歌人も登場するが、初めて名前を知るような歌人も多く取り上げている。おもに同時代の歌人を2人ずつ紹介し、彼女たちのシスターフッドと、かけがえのない相手にめぐりあったからこそ起きる化学反応を描く。火花を散らす出会いが鮮やかに切り取られ、一つひとつのエピソードが面白い。短歌の入門書としてもすぐれている。

　細井和喜蔵『女工哀史』は知っていても、彼の妻で実際に女工として働いた経験があり、書くべき現実を細井に伝え、経済的にも支えたトシヲという女性がいたことを知る人はたぶん少ないだろう。『不屈のひと』は、トシヲの生涯を、そのひたむきな思いを小説に描く。

『女工哀史』を書き終えてすぐ細井は亡くなり、トシヲとは内縁関係で戸籍の届けを出していないことがわかると、ベストセラーの印税も支払われなくなった。

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