消費減税は効果があるのか!? 見通すための4つの学説

選挙のたびに争点に

東谷 暁 ジャーナリスト

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いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 2025年7月の参院選を前に、野党が次々と物価高対策として、消費税減税を政策に掲げた。主なものを挙げれば立憲民主党は「来年4月から1年間食料品の消費税ゼロ」、国民民主党は「実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税は一律5%」、日本維新の会は「食料品にかかる消費税を2年間0%に」、共産党は「消費税廃止目指し、緊急に税率一律5%」、そして参政党が「段階的な廃止」を唱えている。

東谷暁氏 ©文藝春秋

 これに対して自民党は選挙前には消費税減税は行わないで、その代わり「2万円の一律給付」を掲げていたのだが、選挙の敗北で「ノー」の民意が出たとみなされた。その後、石破茂首相が辞任して、消費税減税も放棄しないと言っていた高市早苗氏の政権が発足した。今や与野党ともに何らかの減税策を打ち出すというのが慣例になってしまった観がある。

 これは他の先進国でも同じ傾向がみられる。OECD加盟国の財政赤字は昨年、対GDP比4.6%に達した。EU諸国では財政累積赤字が急増し、トランプ大統領の米国でも似たようなものだ。トランプは公的機関への支出を激減させているが、それ以上にビジネス刺激策の減税を断行しているので、結果として財政赤字は増加すると予想されている。

 日本の場合、あるシミュレーションでは消費税を恒久的に引き下げると「中長期的」に消費が1.5~4.4%伸びるとされる(日本総研)。そのいっぽうで、食料品の8%の軽減税率を0%に引き下げた効果は翌年GDP比0.33%の押し上げがあっても、翌々年にはマイナス0.2%に転落するとの予測もある(明治安田総研)。消費減税は高額所得者にとり有利であり、累積赤字について綿密な議論もないまま財政支出が唱えられる。

減税嫌いの財務省に近い立場

 こうした「財政ポピュリズム」は今に始まったものではないが、昨今はコロナ禍による景気後退への対策が常態化したこと、また財政支出に関する学説がいろいろ出てきたことも契機になっている。論者がどの学説で論じているのか分かれば消費減税についての理解も速いし、自分で考えるさいにも役に立つ。ここでは(1)従来の財政学の赤字反対スタンス、(2)ニューケインジアンの条件選択的なスタンス、(3)MMT(現代貨幣理論)論者の高インフレが起こるまで財政支出は可能というスタンスの3つを説明しておこう。

 まず、(1)の財政学のスタンス。財政学を専門にする論者の見解では日本の財政累積赤字は危機的状態にあり、どんな財政赤字でも批判対象になる。これは減税を嫌う財務省の立場に近い。次の財政学者・井堀利宏氏の指摘はかなり柔軟性のあるほうだと言える。「物価高で困窮する家計に政治が配慮するのは望ましい。しかし真の弱者に対象を限定した給付であるべきだろう。全国民対象の減税や給付金はインフレ抑制に逆効果であるだけでなく、財政規律を悪化させ将来に大きな負担を生じさせる」(日本経済新聞)。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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