消費税の核心〜いつ、どこまで上がるのか

大研究 日本の税金 失われた15年 「借金大国」にしたのは誰だ

野田 毅 自民党税制調査会会長・衆議院議員
岩本 沙弓 大阪経済大学客員教授
ニュース 政治 経済

デフレ下で上げられる? 弱者いじめ? 大企業優遇? 白熱の討論で増税の是非を問う

「世界一の借金王」と自嘲した小渕恵三元首相(左) ©時事通信

 浜 この秋、安倍総理は一つの決断を迫られています。それは消費税を上げるかどうかです。十月には、来年四月に予定されている五%から八%への引き上げを実行するのかどうか、決めなくてはなりません。

 そもそも、これは当時野党であった自民党も加わった三党合意で決まったもの。しかし、ここにきて、安倍首相のブレーンとされる浜田宏一・エール大学名誉教授が「心配なときには延期する考え方もある」と発言し、安倍首相自身も参院選直後のインタビューでは「数値をじっくり見ながら判断したい」と慎重な姿勢も見せていますね。

 自民党きっての税通といわれ、現職の自民党税調会長でもある野田さん、安倍さんのブレをどう見ますか。

 野田 リーマンショックのような金融危機、天変地異でもあれば別ですが、安倍内閣成立以降、着実に経済が好転している中で、ブレているとは思いません。消費税引き上げの先延ばし論を弄ぶことはナンセンスです。むしろ、消費税の引き上げとデフレ脱却をいかに両立させるかが、アベノミクスの大前提なのです。もし、今回、先延ばしするようなことになれば、国債の金利はコントロールできるのでしょうか。浜田先生は立派な方ですが、社会保障財政に関する認識が不十分なのではないでしょうか。

 今、国の借金は九百九十一兆円。これだけでもGDPの二倍以上ですが、今世紀に入ってから、社会保障費は毎年一兆円以上増えている。このままだと財政赤字は膨れあがる一方です。かといって、歳出削減にも限界がある。もはや桁が違うのです。すでに、三十年以上前の昭和五十七年から少子高齢化が進み、公的年金の保険料収入と支給額は逆転している。さらに、これから団塊世代が後期高齢者となる「二〇二五年問題」を迎える。いよいよ先延ばしも限界だとはっきりしたから、昨年夏に社会保障と税の一体改革について三党で合意できたのです。

 浜 消費税増税が景気動向、ましてや株価などの目先の事情で議論されるべきでないというのはその通りですが、今回の増税論議で気になるのは、日本の租税体系そのものが語られず、いわば小手先の数字合わせの域を出ていないことです。実は、日本の租税体系は戦後間もない頃の大枠のままなんです。日本の中には日本で個人所得税を払う立場にある人々しか住んでいなくて、しかもその大半がサラリーマンだという理解の下に、源泉課税方式の個人所得税に租税体系の中軸を置く。そのような租税体系がずっと抜本的な変更なく踏襲されてきた。ところが、今日の日本の経済社会の実態は違う。日本の中で様々な国籍の人々が働いている。脱サラ傾向も強まっている。租税体系そのものが時代錯誤なものになっているのです。

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source : 文藝春秋 2013年09月号

genre : ニュース 政治 経済