言語や文化のはざまに立つ書き手による文章集
最近、現代日本文学が世界――とりわけ英語圏――で広く読まれている、という報道をよく目にする。新聞や雑誌にとどまらず、テレビでも特集が組まれている。歓迎すべきことではあるが、長く文芸翻訳の仕事に携わってきた身としては、手放しでは喜べない思いもある。
日本と世界、そしてしばしば媒介となる英語や英語圏との関係について、最も深く考え、葛藤してきた書き手として、水村美苗の名を挙げる人は多い。10年ほど前、日本文学研究者の友人が村上春樹の国際的需要を論じるなかで、その対極に位置する書き手として水村を挙げていた。かなり単純化して言えば、村上は翻訳を誘う文学、水村は翻訳に抗う文学、という整理である。
漱石の未完の遺作を書き継いだ『続 明暗』でデビューし、「日本初の横書きバイリンガル小説」と銘打たれた『私小説 from left to right』で新境地を切り開いた水村は、英仏語にも堪能で、国際的な作家というイメージが強い。しかし、言語間を自在に行き来できるがゆえに、国際的な文芸シーンに向ける眼差しは冷静である。

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