激変する国際情勢と世界経済を、第一次トランプ政権の大統領副補佐官・ポッティンジャー氏が徹底分析
■連載 投資家のためのディープな地経学
第3回 「習近平失脚」デマはなぜ流れたか
第5回 同盟を強化する中国にトランプは対抗できるか
第6回 「サナエとドナルド」の連携で中国の影響力を打破せよ
第7回 “要塞化”する中国
第8回 トランプ政権「国家安全保障戦略」の危うさ
第9回 地政学的大転換が起きる2026年
第10回 ←今回はこちら
習近平国家主席が中国軍を自らの絶対的な個人支配下に置こうと進めてきた長年の取り組みは、いま重大な局面を迎えています。
2026年1月、中華人民共和国国防部は、中国で最高位の将軍である張又侠が、数々の政治的違反行為の疑いで調査対象となったことを公表しました。これまでに人民解放軍の最高幹部の4分の3以上に影響を及ぼしている今回の習主席による粛清の中でも“最も大胆な一手”といえます。
中国の政治体制の不透明さは、派閥抗争や、張上将が李尚福の閣僚就任を後押しした見返りに賄賂を受け取ったり、核機密をアメリカに漏らして賄賂を受けたといった報道や憶測を助長しています。

2月9日には、権威ある『解放軍報(PLA Daily)』紙の論評で、張国燾が引き合いに出されました。張国燾は「長征」〔毛沢東率いる紅軍が、蒋介石の国民党軍の追跡を逃れて退却を重ねた1934〜36年の行軍のこと〕の最中に党中央に反抗し、最終的に国民党へと投降して香港に亡命したため、人民解放軍史上「究極の悪党」とされ、毛沢東が革命を遂行するために打ち破らなければならなかった人物です。
粛清には明確な理由がある
今回の粛清の実際の理由は、世間でささやかれているような扇情的なものではありません。しかしアジアの平和と安定にとって、より重大な意味を持つ可能性があります。
一世代にわたる軍指導部が一掃されたことで、人民解放軍が混乱状態にあるとの見方もあります。それは、習主席が掲げる台湾との「祖国統一」という目標を後退させる兆しのようにも映ります。
しかし実際には、これは習主席が長期的に描く構想の一環です。人工知能やドローン、さらには宇宙・海中・サイバー空間といった新たな戦域を掌握できる、より規律ある新世代の将官へと世代交代を進めるための布石とみられます。
習主席の最終的な目標は、台湾を制圧し、さらに米国および日本を含むその同盟国との潜在的な対峙において優位に立てる軍事力を築くことにあります。
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source : 文藝春秋 2026年4月号

