断食だけは、ごめんだった。無理っ。と、思っていた。わたしにとって「ダイエット」とは「いかに自分をだますか」「ごまかすか」であり、代表「ご飯の代わりに蒟蒻」的なことであって、「ラクして痩せる」ために一生懸命だったから。「つらいことにチャレンジ」だけはイヤ。だからこれまで運動、体操で痩せられなかった。断食なんて、一番遠くにあった。なのに、なのに。
「月曜断食前」(わたしの人生の年表があるとして、紀元前、みたいな感じ)では、158センチで64キロ。48歳。産後にどんどん太って……という、言い訳も王道中の王道を突進(あれは突進だと思います……)していた。20年の付き合いのセレクトショップのおねえさんにも「リサちゃんて、もう痩せないの?」と、心配されていた。というか、困っていた。サイズないよ〜、と。聞こえていた。「もうこのサイズで生きていくんで!」と、周りに言っていた。言わなければいけないほどだった。実は、ご飯を減らす、とかコソコソやっていた。しかし、痩せるどころか、まだ太りそうで、その頃、3つ年下の、顔がウリフタツの妹が70キロまで太っていて、(こ、こうなるのか……)と、先を行く妹を眺めていた。
話はひょんなところから、本当に「ひょん」と音がした、くらいの感じでやってきた。「仕事で、断食しませんかぁ〜」と、軽く。「月曜断食」の本を作った担当さん(前から知り合い)が、本をもっと宣伝したいので、「だれか痩せれば宣伝になるんじゃないか」と、デブを探していたのだ。そこにヒットしたわたし。わたしもちょうど、デブに飽きていた。
実は、デブの他にも困ったことがあった。「咳」がひどくて、薬(ステロイド剤の入った吸引式のもの)を使っても治らず通院していた。原因わからず。喉が咳モードになると止まらなくなるので、いつも飴をなめている。で、なおさらデブる。咳は「血、吐く?」と思わせるようなひどい音で、映画館で映画1本の時間がもたない。ロビーに出て、咳き込まないといけない。電車で始まると、もちろんマスクをしているんだけど、嫌な顔をして車両を変える人もいたなあ。「断食」の話をいただいた日も咳き込んでいたin「月曜断食」著者の関口賢先生の関口鍼灸治療院。
「断食すると体質も改善されて、咳も止まるかもしれませんよ」って、言われたのだ。
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source : 文藝春秋 2020年1月号