「文藝春秋」の編集者が明かす、電子版限定の“ここだけの話”
「文藝春秋」4月号の『日本の顔』では、沖縄県石垣島の染織作家・新垣幸子さんにご登場いただきました。
私が沖縄の工芸品に興味を持ったきっかけは、成人式に紅型調の振袖を着たことでした。島津藩に縁があり琉球の文化にも思い入れが深かった曾祖母が私の母のために誂えた振袖で、それを私が受け継いだのです。

美術評論家の柳宗悦が「どんな国の女たちも沖縄の『びん型』より華麗な衣裳を身につけたことはないでしょう」と評したように、紅型の鮮やかな色彩は、纏うだけで気分が晴れやかになる。同級生とはひと味違う晴れ着に、内心鼻高々になったものです。以来、紅型だけでなく、沖縄の織物、焼き物のやちむんなど、独特の風土を感じさせる沖縄の工芸に魅せられていきました。
そんな折、明るいニュースが飛び込んできました。2024年、石垣島で八重山上布を織り続けてきた新垣幸子さんが重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されたのです。

今回、新垣さんの工房を訪ね、実際に作品に触れる機会もいただきました。陽の光を受けてほのかに透ける八重山上布は、軽やかでありながら気品があり、同行したカメラマン共々、思わず見入ってしまう美しさでした。
同時に強く心を動かされたのは、新垣さんのこれまでの歩みです。終戦直後、物のない暮らしのなかで育ち、地元で就職しながらも「自分はこのままでいいのだろうか」という思いを抱き続けてこられたこと。自然の色彩豊かな石垣島にありながら、八重山上布が白一色で織られていることに疑問を抱き、本来どのような織物だったのかを探究されたこと。逆境のなかでも歩みを止めず、八重山上布に向き合い続けてこられたその姿に、深く胸を打たれました。
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