佐治敬三(さじけいぞう)(1919―1999)は、サントリー創業者、鳥井信治郎の次男として生まれる。2代目の社長として社業を発展させただけでなく、日本に洋酒文化を根付かせた。福原義春(ふくはらよしはる)(1931―2023)は資生堂名誉会長。同じ文化人肌の先輩経営者をどう見ていたか。
もう古い話になるが戦中・戦後を生きて来た昭和人で、洋酒文化と称するものに影響を与えられなかった人はまずいないのではなかろうか。よかれあしかれ、それは時代の生き方の提案で、しかも世間に広く受け入れられたのであった。それをつくり上げたのは佐治敬三、その人の個性であった。

経営者としてのスタイル、「やってみなはれ」の精神は社内ばかりでなく、社会にまで発信された。関西財界の雄としては云いたいことを云い、思ったことを大きな声でたたみかけるのに、だれも反発を感じない憎めない人柄の大きさであった。
トリスウィスキーの発売、サントリーウィスキー角瓶の販売促進は、なつかしいサントリーオールドの発売につながる。その間に三和銀行から山崎隆夫さんを取締役宣伝部長として招聘し、山崎さんとともにイラストレーターの柳原良平さんも入社させ、やがて柳原さんにトリスのキャラクターづくりをやらせる。そのころ開高健さんをコピーライターとして見出すのだ。
このあたりが佐治さんの真骨頂であって、これと見込んだ才能にはとことんまでその力を発揮させる。山口瞳さんやのちにサントリーホールのプロデューサーとしていい仕事をした萩元晴彦さんの起用も同じことだ。
新しい技術、新しいマーケティング、そして目を瞠(みは)るような宣伝広告の展開とともに、PR雑誌『洋酒天国』、サントリーホール、サントリー美術館とその収蔵品の蒐集と、産業と文化の混然一体となった演出には敬服のほかない。
日本のテレビ放送の初期には西部劇ドラマ「ローハイド」の番組提供、ジョージ川口や中村八大(はちだい)をメンバーとする寿屋(サントリーの前身)提供のジャズ番組などはそのころの世の中のたのしみであった。
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source : 文藝春秋 2002年2月号

