「ナチス独裁」までを追体験
これまでに読んだ中でいちばん面白かった本は何かと問われたら、『古川ロッパ昭和日記』と答える。僕が日記ものを好物とする理由は日記という形式に固有の効用にある。第一に、文脈の豊かさ。記述が具体的かつ細部にわたるので、書き手を取り巻く同時代の文脈がよく分かる。第二に、時系列であること。大きな変化ほどゆっくりと進む。小さな変化の積み重ねで社会は動いていく。その流れを追体験できる。第三に、書き手がその後どうなったのかを知らずに書いていること。事後的な解釈が介在しない。むき出しの事実をつなぐことによって、真の因果関係が見えてくる。日記を読むと、人や人の世の本質についての理解が深まる。
『ヒトラー、権力までの180日』は、1932年夏から1933年1月の首相就任までの期間を射程として、ナチスドイツが独裁権力を手中に収めた経過を描く。本書の最大の美点は日記的な手法にある。当事者の日記はもちろん、新聞報道や論説などの資料を駆使し、民主主義が崩壊するプロセスを「当時の人々が認識したように」再現する。緻密な考証に基づきながらも、一級の政治サスペンスのような緊迫感で読者を惹きつける。

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