梨、株式会社闇、大森時生「恐怖心展 特装版」

綿矢 りさ 作家

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エンタメ 読書

人はなぜ恐れを抱くのか

 恐い本というのは、自室の本棚で異様な存在感を放つ。読み終わったあとでも、その背表紙の題名が、チラと目に入るだけで、読んでいたときのザワザワが思い起こされる。

 だから子どものころは怪談の本を本棚に置いておけなくて、冷蔵庫の横のすき間に放り込み、見えないように隠した経験がある。

 しかし今度は冷蔵庫が恐くなってしまい、(冷蔵庫の扉を開けたら、なぜかあの本が野菜コーナーとかに入ってたらどうしよう……)と突拍子(とっぴょうし)もない想像をして、おびえたものだ。読んだあとの影響力が絶大だ。『恐怖心展』のこの本は、展覧会での内容を紹介し、さらに特装版となったバージョンだ。かなりのファンに向けて作られたのか、お値段も高く、そして持っているのが嬉しくなるような、豪華でスタイリッシュな造りである。本の中身、内容は十分恐く、また霊的な恐しさというよりは、人間がうまく説明できないが本能的にゾッとするものを詰め込めるだけ詰め込んであるので、さっき言ったような“本棚に置いておけない度”はMAXに達するはずだ。

梨、株式会社闇、大森時生『恐怖心展 特装版』(太田出版)9900円(税込)

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source : 文藝春秋 2026年6月号

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