平塚八兵衛 妻が漬けたナスを獄中の小原保に差し入れた

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平塚八兵衛(ひらつかはちべえ)(1913―1979)は茨城県生まれ。昭和14(1939)年に警視庁巡査となり、刑事としてのキャリアは30年以上に及ぶ。ベルメルシュ神父事件、吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件、三億円事件など捜査を担当した難事件は枚挙にいとまがない。警視総監賞を97回も受けている。つねさんは夫人。

 上野松坂屋裏で身元不明の女性が殺された事件がありました。その捜査本部につめていた主人のもとに突然、武藤三男(当時捜査一課長代理)さんから、

「小原の3度目の調べをやるから、こっちへ来てほしい」

 と連絡が入ったのは、昭和40年5月のことでした。捜査本部は、小原保を吉展ちゃん誘拐事件の容疑者として2回も逮捕しながら、犯行当日のアリバイを切り崩すことができず、捜査は完全に行き詰まっていました。すでに事件発生から2年が経過しており、捜査員の方々の大半は、小原を白と決めこんでいたようです。

「みんなが白にしたものを、いまごろになってオレはできない」

 主人は突っぱねたものの、小原が白なら、もはや容疑者はいませんでした。

「小原には、どうしても引っかかるところがあるんだ。少し調べてほしい」

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source : 文藝春秋 1989年9月号

genre : ニュース 社会 昭和史