数々の傑作で黄金時代を支えた、ちばてつや氏とちばあきお(1943―1984)の兄弟。だが、『キャプテン』が大きな共感を呼んだあきおは、昭和59(1984)年9月13日、自らの生を断った。享年41。
あきおは結婚して独立した後も、アイデアに詰まると自分の仕事場を離れ、両親が住む私の家へやって来ては作品の構想を練っていました。朝9時か10時に現れて、夕食前の6時頃まで部屋にこもりきり。帰り際に私が仕事をしている屋根裏に顔だけ覗かせて、「じゃあな」と去っていくのです。
その前日もいつもと変わった様子は特に感じなかった。まさかあれが彼の最後の姿になるとは思いもしませんでした。いまでも仕事の途中にふと顔を上げると、あきおがひょっこりそこにいるんじゃないか。そんな気がしてなりません。
千葉家4兄弟の3男・亜喜生(あきお)は、昭和18年に満州の奉天で生まれました。戦争が終わると、私たち一家6人はたいへんな苦労をしたものの、幸いひとりも欠けることなく、日本へ引き揚げることができました。

東京に落ち着いた頃、両親が相次いで大病を得てしまいます。長男の私が生計を支えなければならなくなりましたが、高校2年、17歳で漫画家としてデビューを果たし、多忙な生活が始まりました。
あきおは工業高校電気科の夜間部に進み、昼間はおもちゃ工場で働いていました。手先が器用で、エンジニアか、ギターやバイオリンを作る楽器職人になることが当時の夢だったようです。ラジオの修理などお手のもの、機械いじりが大好きでした。
ところが、高校に入ってしばらくすると、腎臓を悪くして、自宅療養をやむなくされます。この時期、私の仕事を手伝ったことが、あきおの将来を変えることになりました。
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source : 文藝春秋 2009年8月号

