竹下登 「おどけもん」の弱音

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第74代総理大臣・竹下登(たけしたのぼる)(1924―2000)の弟で、秘書として兄を15年間支えたのが竹下亘(わたる)氏だ。兄の後を継いで衆議院議員となった亘氏が明かす、昭和最後の総理の「素顔」とは。

 

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 私と竹下登は母親が違いまして、歳が23歳も離れています。だから半分兄貴であり、半分父親代わりでした。何しろ、私に「亘」とつけたのも、弟に「三郎」とつけたのも、父ではなく兄ですから。

 竹下登の長女と私が同級生で、次女と三郎が同級生。つまり叔父と姪が同級生で、同居していたわけです。だから兄と遊んだ記憶はなく、もっぱら一緒に遊んだのは姪っ子たちでした。私が幼稚園の時にはもう兄は県議会議員選挙に出て初当選を果たしていた。私は子供心に、「あれだけ大人たちがのぼせ上がっているんだから、何か面白いことをやっているに違いない」と思っていました。子どもにはまさにお祭のように映ったんでしょう。兄は議員になると益々忙しくなって、ほとんど家にいなかった。

竹下登 ©文藝春秋

 私は中学を卒業すると、故郷・島根を出て、慶応高校に通います。日吉で下宿生活です。兄は国会議員になっていて、赤坂にある2DKぐらいの宿舎に夫婦で住んでいました。私は週末になるとそこに通って、ご飯を腹いっぱい食わせてもらうのが常で、時には洗濯物を持っていきました。当時まだ駆け出しだった兄は、食卓で佐藤栄作、橋本登美三郎、田中角栄……色々な先輩議員の物まねをして「政治の世界はこんな風になっているんだぞ」と面白い話を沢山聞かせてくれた。

ステテコ姿の「白鳥の湖」

 とにかく兄は根っから明るくて一切怒らない人です。3人の娘がいますが誰も怒られたことなどないでしょう。「人様に迷惑をかけるな」だけを、口癖のように言っていました。普段はいわゆる「おどけもん」で冗談ばかり。時には家族の前でステテコ姿になって「白鳥の湖」を踊ることもあった。

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source : 文藝春秋 2009年8月号

genre : ニュース 政治