戦後80年の新発見!「けものみち」モデル〈伝説のフィクサー辻嘉六〉の遺言状

千本木 啓文 ダイヤモンド編集部副編集長

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死去3日前に遺した児玉誉士夫へのメッセージ

 その遺言状を初めて目にしたときは高ぶりを抑えられなかった。毛筆で書かれた巻紙を、震える手で開いていくと「児玉誉士夫」の文字が現れる。これは自民党の成り立ちや、戦後の日本政治の闇を明らかにする鍵になるかもしれない――。崩し字で書かれているため、判読できない部分が多かったが、重要なことが記されていることは直観的に伝わってきた。

 だが、普段の取材なら平然と言える「この書面を写真に撮らせてもらっていいですか」という一言が出なかった。そういうことを軽々しく言えない何かがそれにはあった。

 遺言状は、大正から昭和前期に活動した“政界のフィクサー”辻嘉六のものだ。嘉六は鳩山一郎をはじめ多くの大物政治家を資金面で支え、児玉誉士夫と共に、1945年につくられた日本自由党(自民党の前身)の結党資金を用立てたことで知られる。遺言状は、その娘で、“保守本流の女帝”と呼ばれた辻トシ子の遺品の中から、彼女の支援者2人が見つけたものだ。

辻嘉六

 支援者らは、2020年に102歳で永眠したトシ子の身の回りの世話をしていた。辻邸で遺品を整理していたとき、仏間にあった観音開きの戸棚に並べられた本の後ろに、隠されるようにして眠っていた遺言状を発見したという。

 嘉六はフィクサーとしての矜持からか、死後に公開された回想録「政界黒幕の弁」(「文藝春秋」1949年12月号)を除けば、手記や記録を残していない。むろん、遺言状の内容が明らかになるのは初めてのことだ。自由党や自民党の創設に詳しい青山学院大学文学部史学科教授の小宮京(ひとし)が語る。

「遺言の存在自体はトシ子がメディアに明かしていましたが、書面が実在することに驚かされました。政界に幅広く資金を提供していた嘉六の遺産を誰が引き継いだのか。この点は謎に包まれており、その一端が分かることも極めて興味深い」

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source : 文藝春秋 2026年1月号

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