★消去法で選ばれた社長
丸紅が社長交代を発表した。4月1日付で柿木真澄・取締役副社長執行役員が昇格、國分文也社長は会長に就く。柿木氏は同社の稼ぎ頭である電力部門出身。このため順当な人事と見る向きが多いが、実際はそうでもない。
実は丸紅の社長交代は、2017年末も取り沙汰された。同根の伊藤忠商事に業績で水を開けられ、社内に沈滞ムードが漂っているため、「体制刷新が必要」と、何人かのOBが動いた。当時の本命は柿木氏だった。だが現職であることが条件である経団連副会長就任を狙う朝田照男会長と、「辻亨氏、勝俣宣夫氏、朝田氏ら歴代社長より在任期間が長い」というレガシーを残したい國分氏の思惑が、社長続投という一点において一致。先送りが決まり「次は若い人を選ぶだろう。1980年入社の柿木氏の芽はなくなった」とも言われていた(ちなみに朝田氏は経団連副会長になれなかった)。
そして昨年末、社内の指名委員会に社長候補として提案されたのは柿木氏のほか、矢部延弘・取締役常務執行役員(82年入社)、宮田裕久・取締役常務執行役員(83年入社)、氏家俊明・常務執行役員(84年入社)の合計4人。本命は柿木氏と同じ電力部門出身で、現在経営企画担当をしている宮田氏だったが、「健康面に不安があり、社長の激務に耐えられないのではないか」と言われ、候補から消えた。
國分氏の意中の人は、4人の中で最も従順な氏家氏。「國分さんは人見知り。氏家さんは社交的で、性格は真逆なのに、なぜかウマが合っている」(同社幹部)。一方、朝田氏は自身と同じ財務経理部門出身で、現在最高財務責任者(CFO)を務める矢部氏を推した。結果、「反りが合わない國分さんと朝田さんの綱引きが続き、本来ならば『終わった人』だった柿木さんにお鉢が回ってきた」(同社関係者)というのだ。
実は丸紅の社長選びには二代前の社長だった勝俣氏が会長退任時に残した「三原則」がある。勝俣氏は朝田氏・國分氏の手腕を否定的に捉えており、社長は「(朝田氏・國分氏の出身の)慶應義塾大学卒はダメ、管理部門出身はダメ、営業で実績がないとダメ」と周囲に伝えていたのだ。紆余曲折の末、電力部門出身で東京大学卒の柿木氏が新社長に就くことで、三原則は結果として守られたことになるが、果たしてこれが吉と出るのか凶と出るのか。
★物言う取締役の誕生
オリンパスは竹内康雄副社長執行役員兼CFOが、4月1日付で社長兼CEOに就任する。だが社長人事よりも話題を集めたのが、筆頭株主の米バリューアクト・キャピタル・マネジメントからロバート・ヘイル氏を取締役として受け入れることだった。6月の株主総会で提案する。
バリューアクトはアクティビストファンド(物言う株主)として知られる。表立って委任状争奪戦を仕掛けて企業と対立する手法はとらず、投資先に役員を送り込んで企業戦略を提案する手法を得意とする。2013年にマイクロソフト株を取得。経営陣のテコ入れを求めてスティーブ・バルマー前CEOの交替劇を後押ししたこともある。
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source : 文藝春秋 2019年3月号