★英政府を揺さぶる日立
日立製作所(東原敏昭社長)が英国で進める原子力発電所の建設が暗礁に乗り上げた。英中部に2基の原発を建設、2020年代前半にも運転を開始する予定だった同プロジェクトはもともと実現が危ぶまれていたが、経団連会長でもある中西宏明会長が昨年12月の記者会見で、「(現行の枠組みでは)もう限界だと英国政府に伝えた」と明かし、一連の観測を認めた。
中西会長が「限界」と語ったのは、当初より入念な安全対策を実施することで、総事業費が2兆円から3兆円に膨らんだためという。だが、この説明は腑に落ちない。
昨春、中西会長が訪英。その後、2兆円超を英政府が融資すること、残る約9000億円については日立と英政府・英企業、日本の政府系金融機関や日本企業がそれぞれ3000億円ずつを出資する計画で交渉を進めていた。「事業費が膨らんだ」のは、いまに始まった話ではない。
「日立の交渉の仕方に問題があった」と関係者は指摘する。日立は2012年、事業主体のホライズン・ニュークリア・パワーを約900億円で買収。さらに3000億円を出資するため、合計で約4000億円を投じることになる。この資金を原発完成後に需要者が支払う電気料金で回収する計画だったが、「電気料金をいくらに設定するか英政府と決めないまま、投融資額の割り振りを決めていた」(前出・関係者)。技術革新が進んだことで再生可能エネルギーの発電コストは下がっている。このため英政府は電気料金を下げようとしており、早期の投資回収を目論む日立と折り合いがつかなくなっているのだ。
ただ日立も簡単に席を立つわけにはいかない。原発輸出は経済産業省が強く進める国策だが、三菱重工業(宮永俊一社長)がトルコで計画していた計画が頓挫するなど白紙撤回が相次いでいる。日立が撤退すれば、経産省が描いた青写真は何一つ実現しないまま消えて無くなる。「日立が下りれば責任が問われるから、経産省は何が何でも作らせようとするだろう」と、日立関係者は言う。
中西会長が記者会見で「限界だ」と語ったその日、原発事業担当の西野壽一副社長は別の場で「あきらめていない」と語った。経済合理性を優先するか、政府の顔を立てるか、日立は揺れている。
★スルガ銀行の統合先は
シェアハウス「かぼちゃの馬車」に関わる融資での不正が昨年発覚、その後も数々の不祥事が明らかになったスルガ銀行(有國三知男社長)の危機的状況が続いている。2019年3月期決算と2020年3月期の見通しが立った時点で、金融庁が救済合併に動くと言われている。ホワイトナイトはどこになるのか。
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source : 文藝春秋 2019年2月号