ぼくらは小説をこう書いてきた。

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新人賞デビューから2作目の『破局』で第163回芥川賞を受賞した遠野遥さんと、今年6月に刊行したデビュー作『明け方の若者たち』が大ヒット中のカツセマサヒコさん。令和の文壇に彗星のごとく現れた2人の若き小説家は、どのように物語を書いてきたのか。互いの創作の秘密を語り合った。

作家デビューのきっかけ

 遠野 新人賞をとって出版するのではなく、出版社からオファーがかかるって稀だと思うんですが、TwitterなどSNSを出版社の方が見て、小説のオファーが来たんですか?

 カツセ そうですね。元々がジャンル問わず書くWebライターではあったので、取材記事やコラムだけじゃなく、ショートショートもネット上に書いてはいたんです。それらの記事を幻冬舎の担当編集が見てくれていて、SNSに連絡をもらったのがきっかけでした。僕は本を崇高なものだと思っているし、本当は人生経験を積んだ60歳くらいで一冊出せればと思っていたから、かなり早い展開になっちゃいましたけど、インターネットがあるから声をかけてもらっているし、60年後にはもうTwitterはないでしょうし(笑)。じゃあ需要があるうちに一冊出したいという気持ちでやりました。遠野さんは、デビューするまでに何作か書かれているんですよね?

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カツセマサヒコ
1986年東京生まれ。大学を卒業後、2009年より一般企業にて勤務。趣味で書いていたブログをきっかけに編集プロダクションに転職し、2017年4月に独立。Webライター、編集者として活動中。2020年6月、『明け方の若者たち』で小説家デビュー。

 遠野 デビューするまでに6作書いて全部選考に落ちたんですよ。デビューした翌年に芥川賞を獲ったから、すごく早いねと言われるんですけど、いやその前に6回落ちてるしなあという。

 カツセ 文学賞に応募した作品が通らなかった場合って、編集者からフィードバックとかはあるんですか?

 遠野 一切ないですね。厳しい世界ですよ。

 カツセ 改善点もわからないわけですよね。そういう時、次の作品はどうやって考えるんですか?

 遠野 本当に手探りですよね。アドバイスくれる人もいないし、何が正解かもわからないし。小説教室とかに通う人もいるみたいですけど、私は通わなかったし、周りに小説書いてる人もいなかったので、ひたすら新人賞の選評を読んでました。この指摘は確かにその通りだなって思うことは盗みます。逆にこの人はちょっとよくわかんないことを言ってるなっていうのは聞きません。選評にもいろいろありますから。こうやって勉強しながら書き直してやっとデビューできたという感じです。

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遠野遥(とおの・はるか)
1991年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。東京都在住。2019年『改良』で第56回文藝賞を受賞しデビュー。2020年『破局』で第163回芥川龍之介賞を受賞。

 カツセ 周りの友人とか家族とかに見せなかったんですか?

 遠野 しなかったですね。本になる前のものを読んでもらってもしょうがないかなと思って。でも編集者さんのチェックが入って気付いたことも多いので、誰か信頼できそうな読み手に読んでもらえばよかったですね。

 カツセ Webだと嫌でも一般読者の反響が返ってくるので、そこは別世界のように感じます。遠野さんは作品を文芸誌にずっと発表されてましたけど、今はnoteなど、世の中にいろんな発表媒体があると思うんです。そのうえで文芸誌に出そうって決められたというのはどういう意図があるんですか?

 遠野 広く人に読んでもらうのは一定のレベルに達してからでいいかなと思ってたんです。一定のレベルっていうのは、出版社が「これは本にしてもいいな」って思うレベルですね。ネットに誰でも読める状態で出すということは考えなかったです。もちろんそれも一つのやり方だとは思います。

お互いの作品に対する感想

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source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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