「感染予防」と「重症化予防」の切り札に感染症に効く薬で冬場を乗り切ろう
<この記事のポイント>
●新型コロナの「感染予防」と「重症化予防」の新たな切り札として漢方が注目を集めている
●未病漢方による予防の最大のポイントは「ウイルスの侵入や増殖をいかに早く封じ込めるか」
●新型コロナに対して治療効果があったとされる漢方薬の日本国内での症例も論文として報告されている
感染症との闘いの歴史
新型コロナウイルス感染症にどう立ち向かい、これをどう克服していくか。この点については、ワクチンと治療薬の開発に期待が寄せられているが、残念ながら現時点ではいまだ道半ばの状況にある。中でもワクチンについては、健康な人々に投与されるため、安全性のハードルは一段と高く、治療薬も含めて手詰まり感があることは否めない。
しかし、着目点や考え方を変えれば、眼の前の風景も変わってくる。例えば、人体に本来的に備わっている生体防御機能に着目し、その生体防御機能に働きかけることで、感染や重症化を未然に防ぐという考え方だ。とりわけ後者については、たとえ感染しても軽症のうちに手を打つことができるという点で、人々の安心にも大きくつながっていく。
実は今、人体の生体防御機能に働きかける「感染予防」と「重症化予防」の新たな切り札が注目を集めている。古代中国にその起源を持つ日本独自の伝統医学「漢方」だ。
長い歴史を持つ漢方専門医院として名高い修琴堂大塚医院の院長で横浜薬科大学特別招聘教授などを務める渡辺賢治医師もこう指摘する。
「漢方の歴史は感染症との闘いの歴史とも言えます。事実、1800年前に書かれた中国の医書『傷寒論(しようかんろん)』にも、現在の腸チフスと見られる消化管感染症との闘いの歴史が刻まれています。今回の新型コロナ禍に際しても、中国では清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)をはじめとする新たな中医(ちゆうい)薬が開発されました。その後、中国をはじめ台湾や韓国でも、それぞれ伝統医療にもとづく治療ガイドラインが相次いで策定され、独自の生薬を用いた伝統的治療が実施されているのです」
中国国家衛生健康委員会による今年2月の報告によれば、右の清肺排毒湯による治療が行われた全701症例における治癒率は実に94%以上にも達している。また、新型コロナパンデミックの震源地とされた中国・武漢市で治療に従事した中医は約4900人いたが、各人が自分に合った中医薬を予防的に服用したため中医らからは1人の感染者も出なかったとの報告もある。
「漢方には病を未然に防ぐ『未病』という概念があります。基本となるのは『内なる正気(せいき)』と呼ばれる生体防御機能によって『外邪(がいじや)』と呼ばれる感染症などに立ち向かうという考え方です。つまり、新型コロナウイルス感染症における『未病漢方』の要諦は、漢方によって免疫力をはじめとする生体防御機能を強化し、できれば感染症状が現れる前にウイルスを排除する(感染予防)、あるいは感染して症状が現れても病を重くさせない(重症化予防)――ということに尽きるのです」(渡辺医師)
修琴堂大塚医院の渡辺院長
「冷え」が最もいけない
では、人体に備わる生体防御機能を強化する未病漢方の具体的な方法とは、どのようなものなのか。
渡辺医師によれば、「養生」と「漢方薬」と「鍼灸」の3本柱から成る漢方のうち、すべてに先駆けて重要になるのが養生だという。
基本となるのは「バランスの取れた食事」「適度な運動」、そして「十分な睡眠」である。加えて、「ストレスを溜めないこと」も肝要だ。さらに言えば、漢方では免疫力を低下させる「冷え」を最も嫌う。季節に合った服装を常に心がけ、中でも腰から下を冷やさないこと。また、体を内側から温めるため、冷たい飲み物を避け、生野菜よりは温野菜、生姜や根野菜などを積極的に取ることも重要だ。言うまでもなく、喫煙者の場合、禁煙は必須となる。
「しかし、新型コロナが猛威を振るう今日のような状況下では、日々の養生に加え、補剤(体に不足しているものを補う薬)の『漢方薬』を使って生体防御機能をさらに強化していくことも重要になります。中でも、肺疾患、心疾患、高血圧、糖尿病などの基礎疾患を抱えている人、同様に濃厚接触、虚弱高齢などの高いリスクを抱えている人はなおさらです。ただし、発熱、咳、痰などの特有の症状が出た場合は、補剤としての漢方薬だけでは対応が難しくなりますので、漢方医などの診察を受けた上で適切な漢方薬を処方してもらう必要があります」(渡辺医師)
※写真はイメージです
使える漢方薬をリストアップ
そこでご覧いただきたいのが次ページ以降にまとめた「漢方薬一覧」である。この表は渡辺医師が代表理事を務める漢方産業化推進研究会が今年5月に発表した未病漢方活用法を参考に、日本で入手可能なエキス剤を「感染予防」と「重症化予防」の二つのカテゴリーに大別して一覧に整理したもので、今回の小誌一覧表の作成にあたっては渡辺医師にあらためて監修をお願いした。
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