聞き手・篠原文也(政治解説者)
――平成も残すところあと4カ月となりました。福田さんは平成2年2月の衆院選で初当選され、議員生活はほぼ平成の時代と重なっています。
福田 平成の御代になって1年後の解散総選挙で立候補したのですが、経済は波乱含み、長期安泰を誇っていた自民党にも不祥事などが重なり、変化の予兆が感じられた頃でした。選挙の最中に大雪が降り、私にとっては印象的でした。
国家的な視点でこの30年間を振り返ると、私が真っ先に思うのは、日本経済にとって激動の時代だったことです。昭和の終わりから平成にかけて、日本は空前の好景気を経験し、地価や株価が高騰しました。その「バブル経済」が弾けたあとは、「失われた20年」とも言われるような長期にわたる景気低迷が続きます。その間に銀行、証券会社を含めて多くの企業が倒産し、金融再編や業界再編が進みました。国家の財政赤字も膨らんでいきます。途中、一時的な好景気はあっても、国民にはその実感がないのではないでしょうか。
ここ5年ほど日本経済は若干の復活を見せていますが、そこには大きな犠牲を伴いました。何かと言えば、第一に、歳出に歳入が依然として追い付けず、国の借金が増えたこと。消費増税を始めとして、財政再建策は今後も大きな課題です。第二に、中央銀行の「異次元」と称する金融政策が未曾有の領域になってきたこと。マイナス金利はその代表です。こうした日本経済の激動が、国民生活に与えた影響は相当に大きかった。企業収益・雇用は回復したが、国民の生活水準の向上は僅かなものです。
バブル経済をもたらした元凶は、昭和60年の「プラザ合意」でした。当時、米国はレーガン政権下で財政と貿易収支の「双子の赤字」を抱えて苦しんでいました。そこで米国が目を付けたのが、対米貿易の黒字が大きい日本です。当時の日本は昭和48年の第一次オイルショックからいち早く抜け出て、先進国の中では極めて順調。ちょうど今の中国と似たような状況でした。そこで、為替レートを是正しようと、先進5カ国でドル売りの協調介入を進めることを決めたのがプラザ合意です。
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source : 文藝春秋 2019年2月号