日本列島「再エネ」改造論

小泉 進次郎 衆議院議員
古川 元久 国民民主党国対委員長
古川 禎久 自民党衆議院議員
ニュース 社会 SDGs
「脱炭素」は日本企業にとって大チャンス。世界を舞台に新ビジネスに挑め

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▶︎菅政権で環境政策は進んでいる。2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した
▶︎昨年12月に「国・地方脱炭素実現会議」を立ち上げた。国と地方が一体になって脱炭素へのロードマップを作っていく
▶︎自前で電力を作る自治体を次々に生み出す、「脱炭素ドミノ」を起こしていきたい
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(左から)小泉進次郎氏、古川元久氏、古川禎久氏

「ペットボトルは使わない」

 小泉 今日は脱炭素についての話ということですが、これはダメですね(と言って、用意されたペットボトルの水をテーブルの端に戻す)。プラスチックごみを少しでも減らすために、ペットボトルは極力使わないようにしているんです。

 古川(禎) お~、大事なことですね。

 小泉 環境大臣としてはこういう身近なところから理解が広がって欲しいな、と。それにしても、ダブル古川先生に囲まれるというのも、なかなかない機会ですから今日は楽しみにしてきました。

 古川(禎) 古川元久先生は大学の同級生で、当時から優秀でした。名前が1文字違いで、よく間違われるものだから、そんな時は「元久には脳みそが2つあるけど、禎久には肝臓が2つあるんだ」と。

 古川(元) いやいや(笑)。私が国民民主党でおふたりは自民党。党は違いますが、いろいろとご縁があって、大臣とはコロンビア大に留学した時の恩師が一緒なんです。時期は違うものの、2人とも政治学者のジェラルド・カーティス先生に教わりました。

 小泉 禎久先生は私の前任の自民党青年局長で、「おい、『進の字』。次、お前だから」と後任に指名してくれました。私を「進の字」と呼ぶのは禎久先生だけですよ(笑)。

 古川(禎) 指名はやはり正解でした。青年局長というポストを一躍有名にしてくれましたしね(笑)。歴代の青年局長も、「オレたちの時代はこんなメジャーだったっけ?」なんて言ってます。

 小泉 あまり持ち上げられると後から落とされそうで怖いので、その辺りでやめていただいて(笑)。

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COP25での“大炎上”

 小泉 いまはコロナ対応ばかりに注目が集まっていますが、菅政権になってからというもの、環境政策はものすごく進んでいます。菅総理は就任後初の所信表明演説で2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。安倍政権の頃から目指していたものの、なかなか宣言まではできませんでしたから、画期的な一歩です。昨年11月には古川両先生が尽力されて、衆参両院で「気候非常事態宣言」が決議されました。政府に加えて国会も足並みを揃えて「脱炭素」に取り組むことを表明できたのです。

 古川(元) 私は超党派議連の共同代表幹事を務めましたが、元環境大臣の鴨下一郎先生に議連立ち上げの相談をしたら、「禎久君が環境政務官をやっていたから、“フルフルコンビ”でやればいいじゃないか」と言われ、それで禎久君に事務局長をお願いしました。今回、「もはや『気候変動』ではなく『気候危機』」との現状認識を与野党で共有したことの意義は極めて大きいと思います。

 小泉 アメリカでは環境政策について共和党と民主党で対立があります。1月20日に発足したバイデン政権はトランプ政権とは全く違った政策を掲げていますが、日本は、「党派的な対立はない」と世界に発信できたことで、もし政権が変わったとしても政策の継続性が担保されるわけです。

 古川(禎) 思えば、きっかけは2019年12月のCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)でした。日本の石炭火力政策が、国際社会から集中砲火を浴びたのです。(地球温暖化対策に後ろ向きの国家に贈られる)「化石賞」を突き付けられたりしてね。

 それで、小泉環境大臣がひとり叩かれる姿を見て、このままじゃいけない、となったんです。そんな気運が国会を動かし、「気候非常事態宣言」という歴史的な決議につながったように思います。大事な場面で、国会が結束したのですね。

 もう一つ。全世界が協力して向き合うべき難題に、日本は率先して政府国会ともに強いメッセージを発した。この意義は大きいと思います。

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 小泉 今だから言えますが、COP25で批判を浴びたことは結果として成功だったと思います。COP25前に石炭火力発電の輸出を禁止するよう政府内で調整を試みましたが、残念ながらまとまらず、前向きな政策を打ち出せないままCOPに臨まざるを得ませんでした。

 ただ、それを隠しても仕方がない。大炎上することを承知で、「前進できませんでした」と正直に語りました。「世界からこんなにも叩かれるのか」とわかってもらえれば、日本の政策が前進すると考えたからです。結果として、その後の国会での議論は「石炭、石炭、石炭」となりましたし、各国の大臣からは「日本の大臣は率直じゃないか」と、逆に信頼関係を築くことができました。

風力か、地熱か

 古川(元) 国会と政府が共に国内外に前向きなメッセージを発したとはいえ、2050年までのカーボンニュートラル実現は極めて高い目標です。実現に向けた課題は山積みですから、次のアクションを早急に起こさなければなりません。温室効果ガスを排出しない太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの普及は欠かせませんが、環境省は経産省などと比べて政府の中での立場が弱いところがありますから、大臣も苦労があるでしょう?

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 小泉 おっしゃる通り、環境省だけで声を上げても政府全体を動かすことはできません。そこで各省庁を集めた会議を官邸に設置する働きかけをしました。その結果が昨年12月に立ち上がった「国・地方脱炭素実現会議」です。環境省が官邸の会議を取り仕切ることは史上初めてのこと。これから国と地方が一体となって脱炭素に向けたロードマップを作っていきます。

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source : 文藝春秋 2021年3月号

genre : ニュース 社会 SDGs