「政治家はゴリラのリーダーに学べ」

第71回

山極 壽一 総合地球環境学研究所 所長

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“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、総合地球環境学研究所所長の山極壽一さんです。

 有働 私は山極先生の本を愛読してきたファンなのですが、ゴリラの研究についてはご著書等で相当語り尽くされていると思います。そこで一捻りして、先の自民党総裁選を、霊長類学者としてどう見ているのかというお話から伺いたいです。

 山極 そう来ましたか(笑)。まず前提として、人間の組織は人数によって性質が変わります。「ダンバー数」を知っていますか?

 有働 いえ、初耳です。

 山極 僕の研究仲間で、イギリスの霊長類学者のロビン・ダンバーが、霊長類の脳の大きさと群れのサイズとの相関関係から、現代人が、意味のある人間関係を維持できる人数の上限は150人だと発見した。それが「ダンバー数」です。

 そもそも人間の社会的ネットワークのサイズには、「3倍の法則」というものがあります。最小は5人で、音楽バンドなど、リーダーが不在でも迅速に動けるチームの規模。その3倍の15人が、1週間に1度は顔を合わせるような間柄で、我々は社会的活動にあてる時間の60%を、この集団に費やしています。次にその3倍強の50人が、明確なリーダーシップがなくても、民主的に運営できる集団の上限になります。そしてダンバー数の150人が信頼できる仲間の上限で、それを超えるとグループの分裂が始まる。500人や1500人となると、名前は知っている間柄でも、利害で動くなど、関係が複雑になっていく。

 有働 自民党の国会議員は、ダンバー数の150人を超えていますよね。一方で50人程度ならまとまりやすいから、分裂して派閥ができていったということですか?

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source : 文藝春秋 2024年12月号

genre : ライフ 政治 教育