日米豪印で中国の野望を封じる

外務大臣激白

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中国には大国としての「義務」と「責任」を果たしてもらう

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バイデン政権は「日米同盟」の強化と「自由で開かれたインド太平洋」の実現に、揺るぎない強いコミットメントを示している
▶︎バイデン政権では、日米を含めた“同盟国”で、中国に働きかけをしていくというアプローチを重視している
▶︎日米の連携と協力の強化は、地域の安定のみならず、コロナ後の国際秩序の安定にも寄与するはず
茂木_SH91812 2020年10月
 
茂木氏

バイデン政権誕生から2カ月で日米会談

 アメリカでジョー・バイデン政権が本格的に外交に動き始めました。4月前半には、バイデン政権が発足してから初となる日米首脳会談が予定されています。これはバイデン大統領にとって初の、対面での首脳会談でもあります。

 ワシントンのポトマック川周辺の桜並木は今年も人々を喜ばせてくれました。菅総理とバイデン大統領が個人的な信頼関係を深める、よい機会となるのではないでしょうか。

 これに先駆け3月16日には、日米外相会談、日米の外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)がおこなわれました。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官が来日しましたが、両者とも就任後、初の外国訪問先として選んだのがこの日本だったのです。

 バイデン政権の誕生は1月20日。そこからわずか2カ月という早さで日米間でハイレベルの会談が行われたのは、決して偶然ではありません。ブリンケン国務長官からも、先日の会談の際に直接伝えられましたが、「deliberately」、つまり、じっくりと考慮した上で初の訪問先を選んだということでした。それは、バイデン政権が「日米同盟」の強化と「自由で開かれたインド太平洋」の実現に、揺るぎない強いコミットメントを示していることの証です。日米同盟を世界の平和と安定のコーナーストーン(礎)と捉えるアメリカの姿勢は、歓迎すべきものです。今回の会談は、日米同盟の意義について、内外に強く発信する良い機会となったと思います。

「2プラス2」では、緊迫する地域情勢、気候変動やコロナ対策といった世界規模の課題など、様々なテーマについて議論を交わしました。

 これはバイデン政権の一つの特徴ですが、外交や安全保障などの政策立案は、各方面のプロを集めてチームで進めている印象があります。ブリンケン国務長官はオバマ政権で国務副長官を、オースティン国防長官は米中央軍司令官を務めた経歴があり、大変経験豊かで、深い見識を持っています。そのような2人が相手だったので、会談が始まった瞬間から非常に議論が噛み合いました。ブリンケン国務長官とはそれ以前にも、何度も電話会談する機会がありましたから、コミュニケーションはバッチリです。しかも彼はニューヨーク訛りで話しますから、私にとっては非常に聴き取りやすい(笑)。会談は約2時間でしたが、議論が多岐に亘っても、あっという間の時間でした。

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バイデン米大統領

普遍的な価値観は絶対に譲らない

 議論のなかでも、大きく時間を割いたのは「中国」の問題です。東シナ海と南シナ海における一方的な現状変更の試み、香港の選挙制度に関する全人代の決定、新疆ウイグル自治区での人権状況への懸念を共有し、日米同盟による抑止力の強化に向けた方針について完全に一致しました。中国への懸念については、共同発表にも反映させています。

 対中姿勢では、トランプ前政権とのはっきりとした違いを感じました。前政権は基本的に“二国間”での交渉で解決を目指すスタンスで、対中もそうでした。それがバイデン政権では、日米を含めた“同盟国”で、中国に働きかけをしていくというアプローチを重視しています。この外交手法は、同盟国をほとんど持たない中国にはなかなか出来ない。同盟が結束した外交アプローチは、ある意味でこちら側の「アセット(財産)」なのだという話がありました。

 私も中国の意識を変えるためには、このアプローチが有効だと考えています。「ここまで経済的にも軍事的にも大国として成長したのであれば、大国としての義務と責任を果たしてほしい」。国際社会全体でそうした声を伝えていき、中国の自発的な変化を促さなければなりません。

 同時に、「基本的人権の尊重」「法の支配」「航行の自由」など、国際社会における普遍的な価値観については絶対に譲らないことを明確にする。例えば、いくら中国が気候変動の問題に協力するからと言っても、「じゃあ、法の支配については、少しくらい目をつむりましょう」という話には決してなりません。

 中国は南シナ海において活動を活発化するのみならず、日本の領海にも度々侵入しています。また、昨年は111日連続で、尖閣諸島周辺の接続水域における中国海警船の航行が確認されました。これは過去最長の記録です。中国海警船の行動もエスカレートし、日本漁船に接近しようとする動きを見せています。さらに今年2月、中国は海上警備にあたる海警局の武器使用権限などを定める「海警法」を施行しました。

 このような行為を中国が続けているのは極めて遺憾であり、日本としては断じて容認できません。「海警法は国際法違反である」との指摘がよく見受けられますが、そもそも、日本固有の領土である尖閣諸島周辺の領海で独自の主張をする中国の海警船舶の活動、それ自体が国際法違反です。これについては中国に厳重に抗議を続けています。

 アジアの国々の中で、ここまで明確な姿勢を中国に示しているのは日本だけと言っていいでしょう。地理的、経済的に距離が近いと遠慮してしまうのかもしれませんが、近隣国であっても、譲らないものは譲らない。実際、日本のこのような姿勢は、欧州の外相やカウンターパートなどからも高く評価されています。日本を含む周辺関係国の正当な権益が損なわれることがないよう、米国、G7、ASEAN諸国を含めた国際社会と連携し、中国の力による一方的現状変更の試みにはこれからも強く反対していきたいと思います。

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習近平中国国家主席

連携の輪を広げる

 中国が大国として台頭するなか、バイデン政権が掲げる「国際協調」や「同盟国の結束」は、これからますます重要になってきます。ポストコロナの時代においては、そうした国際協調やルール作りを、日本が主導していきたい。

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source : 文藝春秋 2021年5月号

genre : ニュース 政治 国際 中国