「チェアリング」のすすめ

ライフ 娯楽
 アウトドア用の折りたためる椅子を持って外に出かけ、公園や川岸、海辺など好きな場所に座ってくつろいで酒を飲む「チェアリング」。コロナ禍においても密を避けながらお酒が楽しめると最近注目を集めている。

 ライターのスズキナオ氏とともにチェアリングを提唱した酒場ライターのパリッコ氏と、酒飲みのバイブルともいえる漫画『酒のほそ道』の作者であるラズウェル細木氏が、都内の公園でチェアリングを楽しみながらその魅力を語り合った。
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パリッコ氏(左)とラズウェル細木氏

密を避けながらお酒を楽しむ

 パリッコ では、まずはビールで乾杯しましょう。お久しぶりです!

 細木 それでは。乾杯!

 パリッコ わ、すごい。ギリギリ苦過ぎないくらいで美味しい。IPAらしいホップが利いた感じで……。

 細木 美味すぎる(笑)。こういう日頃飲み慣れないビールがチェアリングには合うかもしれない。

 パリッコ 居酒屋の一杯目はスーパードライとか普通のビールが良いけど、こういうところではクラフトビールのような非日常感があるものを飲むのも良いですね。

 細木 今日は天候にも恵まれましたね。晴れていて、暖かくも寒くもないっていう日は実は1年の中でもそんなにない。しかも風もないなんて最高じゃないかな。

 パリッコ いやあ、最高です(笑)。

 細木 実際にこうやって椅子に座ってみると、やはりベンチとは全く座り心地が違いますね。

 パリッコ 1000円ちょっとで買える椅子でも全然違いますよね。座り心地の良さと、自分で場所を選べるという二大要素がチェアリングの醍醐味でもあります。座り心地が良いと1時間ぐらいボーッとできちゃう。ベンチだと20~30分くらいが限界ですけど。

 細木 うん、ベンチだと尻が痛くなってそれぐらいが限界ですね。

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「ソロ」は気恥ずかしい

 パリッコ ラズ先生、チェアリングは初めてですか? 『酒のほそ道』の3巻には、折りたたみ椅子を持って酒屋でワインを買い、オイルサーディンとパンとチーズをつまみに一人、公園で飲むという、チェアリングの元祖を描いたような回がありましたよね。

 細木 ありましたねえ。でも僕自身は実際に椅子を担いで飲みに出た経験はなくて。ベンチやテーブルがある公園で外飲みをするというのはあるけど、チェアリングは今日が初めてです。ちなみに、ソロでチェアリングというのも頻繁にやるの? ちょっと気恥ずかしいというか……。ベンチなら「ここにベンチがあるから飲んでるんですよ」っていう体にできるけど、わざわざ公園に自前の椅子を持ってきて飲んでいると、まず目立ちますよね。

 パリッコ どう見ても、変わり者ですよね(笑)。

 細木 まあ、集団だとそうでもないのに1人だと人目を引く。人の目を意識することと、自分の世界に浸ることの兼ね合いはどうなってるんですか?

 パリッコ 僕も今日みたく天気が良くて〆切りがないときは1人でチェアリングしますけど、いきなりソロはハードルが高いと思います。ただ、人の流れが見えない方を向いて座ってしまうと意外と気にならなくなるというのもあります。

 細木 確かに大きな公園だとそれなりに埋没できてしまうかも。住宅地の児童遊園とかだとちょっと難しいかな。

 パリッコ そうですね。そもそも「椅子を担いで外に出る」というのが意外とハードル高いんですよね。でも1回やってみるとハマるのがチェアリングなんだと思います。

 細木 座っていると鳥の声がこんなに聞こえるんだなあ。海岸なんかでもよくあるけど、ラジカセやギターを持ってきて鳴らしている人がいると、せっかく自然を味わっているときに音楽は余計だなって思いますね。

 パリッコ 以前、試しに1回だけ、チェアリングにスピーカー付きのMP3プレーヤーを持っていったんですけど、すぐに音、消しちゃいました。「要らないな」と気付いて。

 細木 そうなるよね。

 パリッコ 「2時間の映画を見る」だとすごく構えてしまうけど、この景色と鳥の声は2時間余裕で聞いていられるんですよね。

 細木 あれ、いまのウグイスじゃない?

 パリッコ あ、いました?

 細木 ホーホケキョって。ほらほら!

 パリッコ 本当だ。しかも、ちょっと練習中の鳴き声。ウグイス、すごいサービスをしてくれてますね(笑)。

 細木 「桜にウグイス」。こんなの滅多にないですよ。

 パリッコ 特別な場所ではなく、近所の公園でこういうのを味わえるっていうのも発見だったりしますね。

結局、景色がご馳走

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source : 文藝春秋 2021年5月号

genre : ライフ 娯楽