「コロナ太り解消」の第一歩はストレッチ!

中野ジェームズ修一 フィジカルトレーナー
ライフ ヘルス
ストレッチで体を動かす楽しみを知ろう。

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▶コロナ発生から1年が経った今、人々の体に何が起きてきたか。実は体調不良を感じる人が増えてきた
▶筋肉量が減りやすい下半身の筋トレを本当はやって欲しいが、運動経験がない方にとってはハードルが高い。そこでおすすめしたいのがストレッチ
▶ストレッチで疲れを感じにくい体を手に入れたら、ぜひ運動へと駒を進めよう
プロフィール写真① (2)
 
中野さん

通勤に運動効果があったが

 新型コロナウィルスによる1回目の緊急事態宣言が出てから、1年が経とうとしています。

 当初は出かけることができず、ストレスを抱える人もいましたが、リモートワークに慣れ、満員電車に乗らなくてもよくなり、快適さを感じる人が増えてきました。自宅のテレワーク環境も整い、生活リズムができて、多くの人が新しい生活様式に順応したことでしょう。

 そして1年が経った今、人々の体に何が起きてきたか。実は体調不良を感じる人が増えてきたのです。私たちのパーソナルトレーニングジムも最近、入会希望者が急増しています。しかもこれまで運動にお金をかけるタイプではなかった人たちが、自分ではどうにもならないからとやってくる。

 これまでは、運動習慣がなくても、通勤で駅まで歩いたり、オフィスの中を歩き回るだけで、それなりに運動効果があったのです。ところが日常生活の中で体を動かさなくなったため、筋肉量が低下。基礎代謝量が下がり太りやすくなった、ちょっとした動作で息がきれる、最寄駅まで行くことすら面倒に感じるようになった。多くの人がそんな体力の衰えを感じています。また、リモートワークでデスクの前に座りっぱなしになり、血行不良により腰痛や肩こりなどに悩まされる人も増えています。

 リモートワークの環境を整えるため、人間工学に基づいた疲れない椅子を購入しようと考えている人も多いようですが、これはおすすめできません。長時間座っても辛くない椅子では、ますます動かなくなってしまいます。実は座り続けている人よりも30分ごとに動いた人の方が、疲労度が低くなるとも言われています。リモートワークにはむしろ、少し座りづらいぐらいの椅子の方がいいのです。30分デスクワークをしたら、1度立ち上がったり、足をバタバタするだけでもいいので、体を動かすように意識しましょう。

 ではどれだけ体力が落ちているのでしょうか。コロナ禍の後に私たちのジムに通い始めた方たちの平均的な数値をとってみました。体重は男女ともにコロナ前よりも平均1㎏増えていました。これを聞くと皆さん1㎏増えたぐらいで抑えられているとホッとします。

 ところが筋肉量を見ると、こちらは平均2㎏減っています。単純計算で脂肪が3㎏増えたことになりますが、脂肪は筋肉よりも軽いので、実質3㎏以上も脂肪が増えているのです。

 少ない筋肉で、重たい体を動かすのだから、疲れるのは当たり前です。心肺持久力と筋持久力も落ちていますから、ちょっと歩くのも億劫になります。

 またコロナの影響で見送っていた健康診断を今年になってようやく受けたところ、高血糖の診断が出たという人も増えています。糖は筋肉で多く使われますが、筋肉量が減り、しかも動かなくなっているので、糖が代謝されにくい。それなのに摂取カロリーはコロナ前と変わらないどころか、自宅の机の周りにお菓子を置いて、間食をしながらリモートワークをしている。これでは糖が余って、高血糖になるのも当たり前です。

リモートワーク
 
リモートワークで運動不足に

ストレッチは「気持ちがいい」

 このようにコロナ禍での1年が経ち、新しい生活様式が体に与える問題が見えてきました。

 トレーナーの立場としては、筋肉量が減りやすい下半身の筋トレを本当はやって欲しいのですが、運動経験がない方にとってはハードルが高いでしょう。そこでおすすめしたいのがストレッチです。

 筋トレが嫌でもストレッチならできるはずです。なぜならストレッチをすると「気持ちがいい」からです。筋トレは3ヶ月ほど続けないとその成果を実感できません。ところがストレッチはやった直後に気持ちよさを実感できる。

 ストレッチには筋トレのように、筋肉をつけたり、ボディメイクをする効果はありませんが、柔軟性を高める効果があります。

 よく筋肉はゴムのように伸び縮みするものと思われているのですが、それは誤りです。筋肉は筋節という細胞が連なってできています。例えば10個筋節が連なっていたとします。毎日ストレッチで、痛(いた)気持ちいい程度に筋肉を伸長させると、脳が筋肉が切れないようにと細胞分裂を促し、11個、12個……と徐々にその数を増やしていきます。これを続けていくうちに筋肉が長くなって、柔軟性が上がるというのがストレッチのメカニズムです。

 ただし、痛みを感じるところまで過剰に引っ張ると、脳は危険を察知して、細胞分裂をやめ、逆に収縮させようと働きかけて筋肉は萎縮します。ストレッチは無理に伸ばす必要はなく、痛気持ちいいと感じる範囲で行うのが正しいのです。

 筋肉は環境に左右される性質を持っています。例えば力仕事の人は重さに耐えられるよう短く太い筋肉になります。バレリーナの人は、手足が伸びるように長くて細く、しなやかで強い筋肉になる。ということは、リモートワーカーは、デスクワークに適した筋肉になっていくということ。短く弱い筋肉になりそうで、恐ろしく感じませんか?

 また、加齢とともに筋節の数は減っていくので、年配の方ほどストレッチをした方がいいでしょう。毎日コツコツと続けていれば、何歳でも確実に柔軟性は上がります。

 強度が高くないので、普段運動をしていない人でも、無理なく実践することができるのも、ストレッチの良いところです。毎日継続できるようになるとセルフエフィカシー(自己効力感)を感じるようになり、次は有酸素運動や筋トレをやってみようという気になる。ストレッチは運動の入り口としても適しています。

体が硬いことの悪影響

 柔軟性がなくなると、体にはさまざまな悪影響が出てきます。

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source : 文藝春秋 2021年5月号

genre : ライフ ヘルス