両球団は昔の「ぬるま湯組織」に戻ってしまった
プロ野球セ・リーグ伝統の2球団、阪神タイガースと読売ジャイアンツが低迷にあえいでいます。2016年に揃って監督に就任した阪神の金本知憲氏と巨人の高橋由伸氏は、今シーズンの成績不振の責任を取り、揃って辞任することになりました。金本監督の辞任は、監督続投の方向で来季の組閣人事が固まったあとに親会社の意向によって電撃的に決まったため、大きな騒動となりました。高橋監督の辞任もチームがCS進出の可能性を残したシーズン途中で発表され、「読売本社による勝利至上主義が垣間見える事実上の解任劇」(東京中日スポーツ)とも報じられました。
監督交代にいたるここまでのドタバタぶりを見ていると、両球団は同じ「組織的な問題」を抱えていることがよくわかります。タイガースについては、私が球団社長をしていた頃に組織改革を進めたのですが、07年に球団を去ってからこの10年ですっかりもとの「ダメ虎」に戻ってしまったようで、残念でなりません。
こう断言するのは元阪神タイガース球団社長の野崎勝義氏だ。阪神電鉄の旅行部門一筋に歩み、96年、球団常務として出向、01年から04年まで球団社長を務めた。球団の組織改革を進め、星野仙一監督のもと、03年に85年以来18年ぶりのリーグ優勝を果たした。球団経営の内実を知る野崎氏が明かす巨人と阪神の「失敗の本質」と「再建の道」とは――。
私はプロ野球球団にとって最も重要なのは「球団経営力」だと思っています。そして今その力を最も発揮しにくいのが巨人と阪神なのです。
球団は大きく分けて3つの部門で成り立っています。(1)グラウンドの選手たちをマネージメントする監督とコーチングスタッフ(2)球団にとって最大の経営資源である選手を揃える編成(フロント)(3)そしてそれらを経済的な面で支え、統括する経営陣。この三者がそれぞれの職分を果たし、三位一体になってこそチームはうまく回っていく。そうやって3つの部門をうまく回すトータルな力こそが「球団経営力」なのですが、阪神も巨人も(1)の問題ばかりに焦点がいって(2)や(3)の構造的な問題が全く手つかずになっています。
そして、両球団が経営力を発揮できないその最大の理由は野球の素人であるサラリーマンオーナー、つまり親会社が現場に口を出し過ぎることです。両球団が抱える問題の根本はここにあります。
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source : 文藝春秋 2018年12月号