中西さんへ

巻頭随筆

ニュース 経済 企業

 中西宏明さんと最初にお会いしたのは、7、8年前、政府の成長戦略を議論する会議でしたね。席が五十音順なので隣り合わせになることが多く、会議の合間によく雑談をするようになりました。会議での発言ぶりも、個人的な会話でも、とても波長が合いました。さばけていて、合理的で、白か黒かはっきりしている。そして底抜けに明るい。一回り以上先輩ですが、留学先も私と同じスタンフォード大学で、昔からの友達と一緒に西海岸の明るい太陽と青空の下にいる感覚でした。

 日立の再生から経営改革、ニッポンの伝統的大手メーカーからデジタル×グローバル型の新しい会社のかたちへの大変容に敬意と関心を持っていましたから、中西さんと話すのが楽しみでした。私もグループ5000名の従業員を抱える企業経営者であり、日立グループと接点のある事業もやっていたので、時折、生々しいビジネスのひそひそ話もしました。そんな時も回りくどい修辞はなく、トップダウンで竹を割ったような結論がスパッと出る。

 中西さんは、企業の究極の存在目的は「世のため人のため」にあるという信念をお持ちでした。しかし、だから利益を犠牲にしていい、儲けなくていい、と言いがちな並みの経営者とは異なり、企業が社会に持続的に貢献するには、まずは「稼ぐ力」が必須だが、日本企業はその力が弱すぎる、という現実を直視していました。

 古くて大きな日本企業がなぜダメになって来たか、どうすれば競争力、稼ぐ力を取り戻せるか、お互いの経験談を交えて色々と話しましたね。集団戦のオペレーショナルエクセレンス(業務改善)一本足打法と終身年功型の同質的で流動性のない組織では、もうグローバルビジネスは戦えない。日本企業の良さは今後も世界で通用するけれど、それを活かすには破壊的な会社改造が必要。まずはリーダーの条件を変え、選び方を抜本的に変えないとダメ等々。同じ頃、日立再生で中西さんとタッグを組んだ川村隆さんとも仕事をご一緒するようになり、お二人のおかげで私の企業観、経営観は大いに進化しました。この学びは人生の宝物です。

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source : 文藝春秋 2021年9月号

genre : ニュース 経済 企業