日本女子サッカー界が誇るレジェンド・澤穂希(43)。その記録と記憶は、現役引退後も多くの人の心に深く刻まれている。元日本女子代表監督の佐々木則夫氏が語る。
佐々木氏
澤穂希は間違いなく日本女子サッカー界の“顔”でありレジェンドですが、実は突出したテクニックがあるわけではありません。堅実なプレーはもちろん上手ですが、技術だけで言えば、もっとうまい選手もいます。けれど彼女には誰よりもボールを奪取する力というか、ゴールを奪う嗅覚がありました。どうやってその感覚を養ったのかと聞くと「ボールを奪わなければ攻撃にならないし、ボールを奪えば失点もしない」と言っていましたね。
監督になって最初に、澤さんにキャプテンをお願いしました。彼女は「苦しい時には私を見て」と自分のプレーでなでしこの若手選手たちに背中を見せる“不言実行”型の選手でした。1度は断られましたが「あなたでないと優勝できない」と説得して、引き受けてもらいました。澤さんのポジションをボランチに変えたのも私です。誠実で堅実なプレーをする一方、強いメンタルとゴールへの鋭い嗅覚を持っている彼女をボランチに置いたことで、なでしこジャパン全体の攻撃力と守備力が格段に上がり、女子W杯で初優勝を達成できたと思っています。
澤穂希
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source : 文藝春秋 2022年1月号