新潟知事選を乗り越え、北朝鮮問題も利用する安倍の唯一のリスク要因
「選挙っていうのはね、勝つと負けるとでは大きな違いなんですよ。勝ったのは大きいですね」
6月20日夜、客単価4万円は下らないという東京・銀座のステーキ店「かわむら」で、最高級の肉をほおばりながら、首相の安倍晋三は、饒舌に語った。「選挙」とは、10日前に投開票された新潟県知事選のこと。与党が推す候補が初当選した。
席を並べたのは、財務相の麻生太郎、自民党幹事長・二階俊博ら、秋の総裁選で3選を目指す安倍を支える麻生派と二階派の幹部たち。安倍の出身派閥の細田派を加えたこの3派には、降ってわいた知事選の前後で、永田町の景色が、全く違って見えていた。
前新潟県知事の米山隆一が週刊文春による「買春」報道で4月18日に辞任を表明。自民は二階の運輸相時代に秘書官だった前海上保安庁次長の花角英世を擁立。かたや野党は女性県議を立て、与野党対決型の選挙戦になった。
安倍自身や妻・昭恵に端を発した森友学園や加計学園の問題で内閣支持率が低落傾向にあるさなかだったこともあって、国会会期末が迫る6月10日に設定された知事選は、政権にとっての中間選挙の様相を帯びた。特に来夏に改選を迎える参院議員にとって、傷ついた安倍が、それでも「選挙の顔」になり得るかの試金石だった。
実際、この間、参院側には不穏な動きがあった。加計学園をめぐる愛媛県の文書の国会提出を野党が求めたのに対し、参院自民は、あっさり受け入れた。提出された文書には、安倍が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と語ったとされる記述があり、その後、安倍は国会答弁で苦しんだ。総裁3選に向けて野党の追及を避けたい安倍や官房長官の菅義偉が早期の国会閉会をもくろむ中、定数を6増する参院選挙制度改革案を唐突に打ち出し、国会延長を主導したのも参院自民だった。
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source : 文藝春秋 2018年08月号