貯金額を不安がるより、自分に“投資”するべきだ
生命保険会社に勤務していた50歳手前で体調不良で休職することになり、それをきっかけに会社員と物書きの「二足のわらじ」を履き、10年近くにわたって「会社組織と働く人との関係」をテーマに多数の著作を出してきた楠木新さん。その後、自身の定年退職後に刊行した『定年後』は、25万部を超える大ベストセラーとなった。この5月に刊行されたばかりの続編『定年準備』も話題となっている。その楠木さんが、「定年後のお金」を軸に、人生の後半戦に必要な助走と実践をアドバイスする。
現役、定年後を問わず、多くの人が「自分の老後」に漠然と不安を感じているようです。そしてその「不安」の中身は、多くの場合、「老後のお金」であるようです。
最近、「定年」をテーマに講演を行う機会が多いのですが、聴衆の多くが「老後資産」に関心を持ち、「老後の準備と言えばまずお金」と考えている人が多いと感じます。ある企業で講演した際には、50歳前後の社員から「いくら貯金があれば、老後を過ごせますか?」と、ずばり尋ねられたこともありました。各企業が行なっている定年後を見据えたライフプラン研修でも、「自分の公的年金などの額を把握して老後資産を管理すること」が、定番になっています。
金融機関のなかには、「ご退職者特別プラン」といった商品を用意して、顧客の取り込みを図っているところもあります。定年後にまとまった退職金が入ると、そうしたサービスを提供する銀行、証券会社、保険会社などに相談する人も多いようです。
各金融機関には、資格を持つファイナンシャルプランナーがいて、資産形成や資産運用について相談に乗ってくれます。専門家である彼らに相談すれば、将来のお金の出入りを想定したキャッシュフロー表をすぐに作成してくれます。現在の財産額、家族構成、夫婦二人の平均生活費、受け取る厚生年金の想定額、家やマンションのリフォーム費用などを入力すると、年齢の経過に応じて資産がどのように変化するかをパソコン画面で簡単に確認できるのです。
ただ、このように将来の資産をシミュレーションすれば、不安は解消されるのでしょうか。おそらくシミュレーションをいくら精密に行なっても、それだけでは問題は解決しないでしょう。というのも、「自分はこれからどう暮らしていきたいのか」「それにはいくら必要なのか」というスタンスがまずあって、シミュレーションは初めて意味を持つからです。
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source : 文藝春秋 2018年08月号