「内なるナチ」の蛮行を暴く
“命のビザ”。日本の外交官、杉原千畝が、リトアニアの在カウナス領事代理として、1940年の夏、ユダヤ人の難民に発行し続けた通過査証のことをこう呼ぶ。前年秋、第二次世界大戦が勃発。ドイツに侵攻されたポーランド方面から、主にユダヤ人の難民が、近隣のリトアニアに殺到した。もっと先へ逃げたい。命のビザが数千人のユダヤ人を救った。
本書は主にその直後のリトアニアの物語。かの国は長年、ロシア帝国に組み込まれていた。第一次世界大戦後、久々に独立。だが、40年6月にソ連軍が侵攻。日本領事館も閉鎖を求められる。“命のビザ”はそんな最中の話。ところが、ソ連時代は、極めて短命にいったん終わる。41年夏、独ソ戦が始まり、リトアニアをドイツが占領。ユダヤ人排除が想像を絶する勢いで進む。
その頃、リトアニアには約22万人のユダヤ人が居たという。総人口のおよそ1割。しかし終戦時には何と8000人しか残っていなかったと、共著者であるイスラエルの歴史家、ズロフは書く。20万人以上が殺された。しかもその大方はドイツ占領初期の短期に。ガス室のような大量殺戮装置があるわけではない。いちいち射殺しては埋めるなどした。
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source : 文藝春秋 2022年7月号