老衰で自然に逝ける茅ヶ崎市の秘密

大特集 理想の介護と最期

葉上 太郎 地方自治ジャーナリスト
ライフ ライフスタイル

風光明媚な都市はいかにして老衰死率No.1になったか

茅ケ崎の海岸 ©時事通信社

「老衰」が死の扉を開こうとしていた。11年も介護してきた母とは、もう別れなければならない。

「いよいよかと思ったら、心臓がバクバクと鳴りました。口の中も乾いてしまって……。ただ、救急車を呼ぶ気はありませんでした。もし病院へ運んでいたら、母は何日か生きたかもしれません。でも、母も私もお互いに十分頑張った。もういいなという気持ちがありました」

 神奈川県茅ヶ崎市に住む70歳の女性が言う。2013年、98歳の母を自宅で看取った。

 実家で独り暮らしをしていた母は02年、S状結腸の癌(がん)で入院した。当時87歳。要介護度2の認定を受けていて、退院後の生活が心配だった。兄と姉はいたものの、末っ子の女性が面倒を見ることにした。

 夫はすぐに日曜大工で廊下や便所に手すりを取り付けてくれた。

 母は近所の散歩を日課にした。遊んでいる子供達に、目を細めて話しかける。中庭に畑を作ると、大喜びで野菜に水をやった。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2018年07月号

genre : ライフ ライフスタイル