「新しい時代区分」が必要だ 泰斗3人の白熱座談会

大特集 日本史の常識が変わった

保立 道久 東京大学名誉教授
加藤 陽子 東京大学教授
小島 毅 教授
ライフ 歴史

文明史、世界史、思想史を駆使して認識を新たにする

平城京朱雀門(復元) ©文藝春秋

第1部 奈良はヤマトに、平安は山城に

 保立 歴史を分かりやすく理解するためには時代区分が重要です。ところが、これまでの常識的な時代区分の根拠については誰も議論していないのに気づきました。これは大きな手ぬかりだったと思います。

 ただむずかしいのは新しい時代区分をするためには、日本だけでなく世界史をふまえ、また遥か昔から現在まで筋を通さねばならないことです。そこで今日は中国思想史が専門の小島毅さんと日本近現代史が専門の加藤陽子さんにお集まりいただき、私の提案をたたき台に議論しようということになりました。

 加藤 日本の戦後史学は概(おおむ)ね唯物史観、下部構造が上部構造を規定するとの、社会構成体の移行から時代の変遷を説明してきました。マルクスについても新たな読解を試みられている保立さんが、王権を握っていたのは誰か、との観点から新たな時代区分を提唱し始めたと聞き、興味がわきました。王権の所在地、国や共同体の構成員を結ぶ神話、支配システムの実態、そうした観点から時代区分を論じる醍醐味を共に味わえればと思っています。

 小島 私は日本史を中国との交渉の視点から捉え直す論点を提出できればと思っています。中国史の時代区分は、唐代、宋代などと王朝ごとに区切るのがふつうですが、政治体制や経済構造の変質によって、より大きなくくりをする見方もあります。日本はあらゆる面で中国から大きな影響を受けてきたわけですから、中国での変革と連動しているはずなのに、これまで歴史学者は双方の時代区分を関連づけて、あまり考えてきませんでした。

 まずは保立さんから新しい時代区分をうかがいたいと思います。

弥生は無文→祭銅器に

 保立 新しい時代区分といっても実は単純なことです。まず従来の常識では、縄文以降、「弥生→古墳→飛鳥」となっています。これは「無文→祭銅器→古墳→ヤマト」とした方がいいと考えています。

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source : 文藝春秋 2018年06月号

genre : ライフ 歴史