ありのままを受け入れるしか仕方がない
社会の高齢化に伴い、認知症患者が急増している。厚労省の発表によれば、2012年時点で国内の65歳以上の認知症患者数は462万人にのぼり、2025年には約700万人、高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されている。
精神科医の長谷川和夫氏(89)は、1974年に認知症診断の物差しとなる「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表した、認知症医療の第一人者だ。認知症ケア職の人材育成にも尽力してきた長谷川氏は、昨年10月の講演で、自らも認知症であることを明かした。
半世紀にわたり認知症と向き合ってきた長谷川氏が、当事者となったいまの思いを率直に語った。
私は50年以上、認知症を専門としてきました。認知症がどのようなものか、大体のことは分かっているつもりでした。
その私が認知症になって痛切に感じたのは、「確かさ」がはっきりしなくなったことです。
医師として、私は認知症は次のような段階を進んで「確かさ」が失われていく、と説明してきました。まず、今がいつなのかが明らかでなくなる。次に、今どこにいるかがはっきりしなくなる。最後に、目の前にいる人が誰なのか、分からなくなってしまう。
私の場合は、自分が話したことを忘れてしまうことから始まりました。話したと思うんだけれども、どうもそうでないような気もする。さらに、昨日の日付は分かっていたのに、翌日になると、今日が何日か分からなくなる。自宅を出るとき鍵を閉めても、鍵を閉めたことがはっきりしないから、来た道を戻って確認しなければ気が済まない。ひどいときは、一度確認したことを何度も確かめたくなる……。
こうしたことから、自分が認知症ではないかと疑いはじめました。
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source : 文藝春秋 2018年04月号