人口減の不安を解消する長期計画を示すべきだ(聞き手・篠原文也)
――まずは外交のことからお伺いしたい。11月上旬にトランプ米大統領が初来日し日米首脳会談が行われました。日米関係の緊密化に大いに寄与したとの評価が一般的ですが、相性が合うだけに、安倍首相はトランプ氏との関係に少しのめり込みすぎてはいないかという危惧もあります。
福田 安倍首相は、うまくやっていると思いますよ。国際状況全体を冷静に見渡しながら対応しているんじゃないですか。むしろメディアの方が「日米蜜月」「ゴルフも楽しんだ」と、ことさらに盛り上げて印象操作をしているのでは(笑)。同盟国である日米のトップ同士が親密であることはまったく悪いことではない。相手の言うことを唯々諾々と聞いているわけでもないし、日本の意見はきちんと伝えています。
――北朝鮮情勢を考えたときに、日米関係はもちろんですが、北朝鮮のお隣、韓国との関係も重要ですね。しかし、ここがどうもしっくりしません。韓国がトランプ大統領を招いた晩餐会で、わざわざ「独島エビ」の料理を振る舞った一件もありました。
福田 ええ、日韓関係は懸案ですね。これはお互いに努力してもっと良い関係にしなければならない。好例があるんです。最近、私の故郷・群馬県高崎市にある上野(こうずけ)三碑というのが、ユネスコの「世界の記憶(旧・世界記憶遺産)」に登録されましてね。上野国(現群馬県)にある石碑3基の総称で、具体的には、「山上(やまのうえ)碑(西暦681年)」「多胡(たご)碑(同711年)」「金井沢(かないざわ)碑(同726年)」のことです。実はこれが多民族共生社会のシンボルと云えるものなんですよ。当時、上野国には倭人に加えて、朝鮮半島から戦乱を逃れてやってきた渡来人が住んでいて、石碑建立は彼らによる渡来文化のひとつと云われています。また碑に書かれている文字は中国発祥の漢字ですが、日本語の語順で書いてある。要するに、日中韓文化の合作と云えます。
歴史を振り返れば、朝鮮半島から来た人も、中国から来た人も日本には沢山いた。漢字をはじめとする文化、風俗、習慣……向こうからきたものは色々あるわけです。そうしたものを、我々日本人は受け入れてきた歴史がある。時には争うこともあったが、歴史を俯瞰して見れば、往来が順調に行われてきたと云っていいでしょう。
それなのに、北朝鮮危機の重要な局面で、日韓が互いに不毛な争いを続け、政治的なお付き合いもうまくできないという現状は極めて残念なことです。次世代に禍根を残さないよう、建設的な話し合いをしなくてはいけません。文在寅大統領は、大統領選挙の実施が見込まれ始めた昨年(2016年)来、「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓慰安婦合意(2015年末)の無効化、再交渉を訴えるなど、国内支持者のことを考えて、反日的な姿勢を取ってきた。この事態をどうするのか、双方政治家の智恵と努力が必要です。
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source : 文藝春秋 2018年01月号