日本人の10人に1人に発達障害の特性が見られる
現在、「発達障害」への関心が高まっている。テレビでも様々な特集番組が組まれ、関連書籍も多数出版されるなか、岩波明氏が今年著した『発達障害』(小社刊)は9刷、16万部を突破した。岩波氏は、昭和大学医学部精神医学講座主任教授で、同大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当する同分野の第一人者である。
一方、経済評論家として多方面で活躍する勝間和代氏は、幼少期から落ち着きがない、過活動の傾向があるなどと指摘され、先日、岩波氏のもとを訪れて、診察を受けたという。
そんな2人に、臨床の現場と自身の経験から、発達障害の実態について語りあってもらった。
勝間 私は、これまで複数の専門家から発達障害の一種であるADHD(注意欠如多動性障害)の傾向について指摘されてきました。つい先日、岩波先生に色々な話を聞いていただき、「軽度のADHDである」と診断してもらいました。発達障害、ADHD、自閉症、アスペルガーなどという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、私の実感では、各症状への正確な理解は進んでいない印象があります。
岩波 はじめに、発達障害の中心的な2つの疾患について整理しておきましょう。
発達障害のひとつに、ASD(自閉症スペクトラム障害)という疾患があります。主な症状としては、「コミュニケーション、対人関係の持続的な欠陥」と「限定され反復的な行動、興味、活動」があげられます。対人関係の障害が見られるとともに、強いこだわりを示す傾向が顕著です。その中には、いわゆる「アスペルガー症候群」も含まれます。スペクトラムとは、「連続体」を意味し、ごく軽症といわれるアスペルガー症候群から重度の古典的な自閉症まで、様々なレベルの状態が分布しているのがASDです。
ASDよりも多いADHD
勝間 もうひとつが私も診断されたADHDで、主な症状は「多動性・衝動性」と「不注意」ですよね。
岩波 そうです。上の図に示したように、発達障害という用語は多くの疾患を含む大雑把なカテゴリーであって、単一の疾患を指すわけではありません。
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source : 文藝春秋 2017年10月号