外食チェーン「国盗り物語」最新勢力図

村瀬 秀信 ライター
ビジネス 企業 商品

牛丼、居酒屋、回転寿司。安く食べられるのにはワケがある

ゼンショーホールディングス・すき家 ©文藝春秋

 連日続く夏の湿っぽい暑さにどうしても耐え切れず、まだ日も明るいうちに、上野駅近くの居酒屋が何軒も入っているビルに全速力で駆け込んだ。

 昔から慣れ親しんでいる居酒屋「坐・和民」へ。キンキンに冷えた生ビールで喉を潤し、店員おススメの焼き鳥(タレ)に舌鼓を打つ。安定のコンビでホッと一息ついたところで、下の階には低価格と鶏料理の豊富さで人気の「三代目 鳥メロ」があることに気が付いた。歌手も居酒屋も最近は「三代目」がいいらしい。店内を覗いてみると、なんと満席。女性客はほぼおらず、サラリーマンらしき男性ばかり。10分ほど待ってようやく席にありつく。名物だという「ぷるぷるダレの炭火焼鳥」がとにかくうまい。ん? 形に見覚えがあるぞ。店員曰く「タレと炭火で焼いているのが売りです。鶏肉自体は、実はワタミと一緒なんですけどね」。ん? 彼はいまワタミと一緒と言ったか?

 何となく釈然としない思いを抱えながら、いつまでも飲み続ける仲間と上の階にある「BARU&DINING GOHAN」という小洒落たバルで飲み直す。照明を落としたしっとりとした雰囲気の店内は、女性客やカップルなどの姿が目立つ。カクテルのつまみに「フライドチキン スパイス&ハニーマスタードソース」を頼んでみる。スパイシーな鶏肉にハニーマスタードの甘辛さが絶妙である。思わず店員に賞賛を贈ると、「ありがとうございます。味付けや調理の仕方が違うだけで、ワタミのから揚げと同じ鶏肉を使っているんですけどね」。

 ……ひっくり返った。

 そう。名前も形態も違うこの3店舗、すべてがワタミグループの系列店だったのだ。

 このビルの事例だけではない。いま外食チェーン業界はM&Aが進み、グループ内の系列店で食材を共有することで、コストを低く済ませるマスマーチャンダイジングシステムが浸透している。それゆえ、どの店に行っても同じようなメニューがズラッと並ぶことが珍しくない。

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source : 文藝春秋 2017年09月号

genre : ビジネス 企業 商品