教育国債はありえない、消費税では遅すぎる
教育無償化をめぐる議論が白熱している。とりわけ注目を集めているのが、今年3月に小泉進次郎衆院議員(36)を中心とする自民党の若手議員が提言した「こども保険」だ。企業と勤労者から集める社会保険料率をそれぞれ0.1〜0.5%上乗せし、これを財源として現行の児童手当に月額5000円〜2万5000円を増額して支給するという構想で、幼児教育や保育の実質的な無償化を目指す。
自民党の茂木敏充政調会長はこの提言を受けて、こども保険などの制度を検討するための「人生100年時代の制度設計特命委員会」を設置。6月に政府が公表する「骨太の方針」に盛り込み、年内に結論を出すよう求めていくとしている。
今回、特命委員会で事務局長として議論をとりまとめている小泉氏に加え、特命委員会副委員長で、前厚労大臣として社会保障を熟知する田村憲久衆院議員(52)、同じく幹事を務め、大蔵省出身で財源論に精通した木原誠二衆院議員(47)に、こども保険の意義や幼児教育のあり方を語り合ってもらった。
小泉 こども保険はもともと、党内の若手を中心に結成された「2020年以降の経済財政構想小委員会」で検討を重ねてきたものです。そんな若手の提言により特命委員会が設置され、田村先生や木原先生といった先輩がたにも加わっていただき、有識者にもヒアリングを重ねながら検討するようなステージに上がるとは、想像していませんでした。
本来、特命委員会というのは、政調会長が自身の関心の高いテーマについて検討するために、トップダウンで設置するものです。しかし今回は、小委員会での1つの提言をさらに議論するために、ボトムアップで特命委員会が設置された。これは恐らく自民党の歴史の中でも初めてのことであり、政策決定過程のイノベーションではないでしょうか。
田村 私自身、今でも気持ちは若いつもりですが(笑)、経験を重ねて物事が分かるようになればなるほど、自由な発想ができなくなっているのも否めない。その点、小委員会ではこども保険の他にもさまざまな議論や提案がされていて、若い先生方の柔軟な発想を眩しい思いで見ていました。提言の中には「これは実際には厳しいな」と感じるものもありますが、いい発想は応援していきたいと思っています。
木原 そもそも、小委員会はどんな問題意識でスタートしたんですか。
小泉 小委員会が結成されたきっかけは、2015年12月の補正予算です。このとき、低所得の年金受給者に1人あたり3万円を給付することになり、そのために3620億円もの予算が計上された。これまで財務省は、子育て支援について「財源がない」とさんざん言っていたのに、高齢者には4000億円近い金額をすんなり出すのかと、愕然としました。
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source : 文藝春秋 2017年07月号