事務系社長が気づかない現場と本社の深い溝
「骨身に沁みたのは、(三菱リージョナルジェットの)開発前の情報収集やリスク分析の勉強が足りなかったということ。よく似た失敗が豪華客船だった。できると思って取り組んだが、事前の分析が足りなかったので失敗した」
今年1月、東京・港区にある三菱重工業本社。実に五度目となる、小型ジェット旅客機・三菱リージョナルジェット(MRJ)の納入延期を発表する会見で、社長の宮永俊一(69)は淡々と敗因を語った。
50年ぶりとなる純国産機の開発には、同社内だけでなく、多くの国民から期待が寄せられた。同社の子会社・三菱航空機で2008年から開発が始められ、当初はスタートから5年後の2013年に納入を開始する予定だった。
だが納入目標は大幅にずれ込み、いまは3年後の2020年の半ばに設定されている。度重なる納入延期により、開発費も予定していた約1500億円から、3倍以上の約5000億円規模にまで膨らんだと見られる。そして驚くことに、開発が開始されてからわずか10年で、三菱航空機の社長は4回も代わったのである。
三菱重工の経営を大きく揺るがしているのは、航空機事業だけではない。同社の“祖業”である造船事業では、ドイツの豪華客船の製造に手間取り、受注額を上回る巨額の特別損失の計上を余儀なくされた。
直近の連結決算である2016年4月〜12月期は、最終損益が112億円の赤字。同期間の最終赤字は、2004年に四半期決算の公表を始めてから初めてだ。世界各地に400以上の拠点を持ち、連結の売上高約4兆円の超巨大企業とはいえ、決して楽観視出来る状況ではない。
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source : 文藝春秋 2017年06月号