50年も歴史を書いていながらこうも平凡な結論にしか達せないのかと思うとがっかりするが、それは、自らの持てる力を活用できた国だけが勝ち残る、という一事である。
古代のローマのようにナンバーワンをつづけるケースもあるし、中世・ルネサンス時代のヴェネツィア共和国のように、ナンバーワンにはならなくても強国の一つとして、長年にわたって政治的独立と経済的繁栄を維持しつづけた国もある。ローマもヴェネツィアも、このような状態にあった歳月たるや一千年に及ぶのだから、ハンパな話ではない。
『海の都の物語』という題でヴェネツィア共和国の歴史を書いていた当時、私の頭に去来していたのは、この国は今ならば、国連の安全保障理事会の常任理事国でありつづけたろう、という想いだった。勝てばそれはそれでけっこうだが、負けさえしなければ、長期的には勝つことになるのである。
それにしても、「自らの持てる力の活用」とは、もしかすると人間にとって最もむずかしい課題であるのかもしれない。だからこそ、歴史に登場した国の多くが、失敗してきたのではないか。
ちなみに、持てる力とは広い意味の資源だから、天然資源にかぎらず人間や技術や歴史や文化等々のすべてであるのは当り前。つまり、それらすべてを活用する「知恵」の有る無しが鍵、というわけです。
わが祖国日本に願うのも、この一事である。
中国を再び追い越すなど、忘れたらよい。国内総生産が世界何位になろうと、そのようなことに気を使う必要はない。大国にふさわしい外交をしたいだって? もともと「和をもって尊しと成す」を国外でも通用すると信じて疑わない日本人に、外交大国になる力があるのか。
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source : 文藝春秋 2017年04月号