「暴言」はアメリカ人の本音だ

特集 トランプは破壊者か革命家か

小池 百合子 東京都知事
ライフ 政治 国際
小池百合子氏 ©文藝春秋

 2月10日、11日に行われた日米首脳会談を受け、安倍晋三首相には、イギリスやドイツなどの先進諸国から次々と「次はわが国に外遊に来てくれ」というラブコールが届いているようです。ドナルド・トランプ米大統領との接点を確保しているという意味で、安倍首相が貴重な存在になったのかもしれません。

 会談の内容は別にしても、日米同盟を考えれば、リーダー同士の距離を縮めることは非常に重要です。オバマ前大統領よりも、トランプ大統領のほうが、安倍首相とはケミストリー(相性)が合うのかもしれません。いずれにせよ、2人が意気投合したのであれば、有意義な会談だったのではないでしょうか。

 正直に打ち明けますが、トランプ大統領の誕生には、非常に驚きました。大方の予想と同様、ヒラリー・クリントン氏が勝利するものと予想していましたから。

 しかし、中東・アフリカ7カ国からの入国禁止など、トランプ氏が就任早々から連発する大統領令の内容を見て、選挙結果以上の驚きを覚えます。選挙期間中の暴言や暴論、そして無謀な政策の数々は、当選するためのマヌーバ(策略)としてやっているのだと思っていました。ところが、本当に実行に移してしまうとは、信じられない思いです。

 ただし、選挙戦略として見ると、「暴言」は、極めて有効でした。

 第一には、選挙費用をかなり節約できたこと。アメリカの大統領選挙には多額の資金が費やされますが、その大半を占めるのがテレビCMです。トランプ氏が暴言を吐けば、メディアはこぞって報道する。たとえ、批判的に報じられても、彼はそれを無料のCMだと捉えました。キャッチーかつ、あえて簡単な単語を連発することで、メディアに飛びつかせ、支持者を拡大させました。

 その広告費削減効果は絶大でした。ヒラリー氏がテレビCMに約2億ドルかけているのに対し、トランプ氏はわずか約4900万ドルと、その差は歴然です。

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source : 文藝春秋 2017年04月号

genre : ライフ 政治 国際