「国は教育を語れ」。異色の科学者が語る日本への提言
今回、ノーベル賞を受賞したことで、私がすごい研究者だと思っている方も多いでしょう。でも、これはすべて微生物がやったことなのです。私はそれをただ見つけただけの話。大騒ぎされるほどのことではありません。
そもそも人類なんて誕生してせいぜい数十万年です。微生物は30億年もの歴史をもっている。今回授賞対象になった「エバーメクチン」という物質も、人間が生まれる前にもう存在していたと思われる。だから、私が何億人も救ったといわれても、自慢をする気にならない。できることなら、微生物に半分でもノーベル賞をあげられないかと思うんですよ(笑)。
ノーベル医学・生理学賞を受賞した化学者、北里大学の大村智特別栄誉教授(80)。山梨県韮崎市に生まれ、定時制高校の教員から一転、研究者の道へ進んだ異色の経歴もあって、その受賞は大きな話題になった。
授賞理由は「寄生虫病の新たな治療に関する発見」。大村氏は、アフリカなどの熱帯地方に広がった「オンコセルカ症(河川盲目症)」などの特効薬となる抗寄生虫薬「イベルメクチン」のもとになる微生物を発見したことが評価された。
当然ながら、まさか受賞するとは思っていませんでした。
受賞の連絡があった日、実は風邪をひいていて、体調が悪かった。それで夕方早めに、秘書に「俺帰るよ」と言っていたのですが、理由も言わずになかなか帰してくれない。一応、ノーベル賞のことが気になっていたんでしょうね。
しばらくするとその秘書が「来た、来た、来た」と、すごい勢いで部屋に飛び込んできた。思わず私は「誰が来たんだ?」と(笑)。電話をとると、ストックホルムからでノーベル賞を授与することに決まったと説明があり、「賞を受けるか」という。とっさに「謹んでお受けします」と答えました。
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source : 文藝春秋 2015年12月号