がんで早逝した“兄貴分”と同時受賞したかった
「今年は誰が受賞するのかな……」
ノーベル物理学賞の発表があった10月6日の夕方、そんなことが頭をよぎりました。
その前日、医学・生理学賞を受賞した大村智先生には、夕方の早い時間に電話があったと報じられていました。私自身が受賞できるとは思っていませんでしたが、周囲の方々は期待を寄せてくださっている。そんなことを思っていた矢先の六時半ごろ、受賞を知らせる電話が鳴りました。頭が真っ白になり、足が震えるようでした。
そこから慌ただしい日々が始まりました。お祝いの連絡でメールはパンク状態。テレビ出演や取材、ノーベル賞関連のイベントの準備などもあって、あまりの生活の変化に嬉しい悲鳴をあげています。
ノーベル物理学賞を受賞した、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長(56)。梶田氏が携わる素粒子物理学の分野は、湯川秀樹が1949年に同賞を受賞するなど、これまでも日本が世界をリードしてきた“お家芸”だ。なかでもニュートリノ研究では、小柴昌俊・東大特別栄誉教授(89)が、2002年に同賞を受賞している。
今回の授賞理由となった研究成果は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」。これ以上小さくすることができない素粒子の一つ「ニュートリノ」は、これまで質量がないと考えられてきた。梶田氏は研究でニュートリノに質量があることを突き止めた。それは、素粒子物理学の歴史を塗り替える出来事だった。
世界の認識が変わった
研究者にとって、予想と違う実験データが現れる瞬間は、とてもワクワクするものです。
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source : 文藝春秋 2015年12月号