少年Aの自己愛、私は絶対に許さない

遺族の悲しみそっちのけの出版。「更生」などほど遠い

奥野 修司 ノンフィクション作家
ライフ 社会
神戸新聞社に送られた神戸の小学生男児殺害事件の犯行声明文と挑戦状(兵庫・神戸市) ©時事通信社

『絶歌』が出版された日である。あるメディアからコメントを求められたが、私は逆に「遺族の了解を得てますか」と尋ねた。「無断で出したようです」と聞き、私は読むつもりはない旨を伝えてこう言った。

「自分が救われたいから書いたのでは遺族は納得できないでしょう。二人の子供を惨殺したうえ、さらに今度は被害者家族の心まで殺そうというんですか」

 この気持ちはいまも変わらない。

 ところが、出版を肯定する人たちの中から、こんな意見が出ているという。神戸連続児童殺傷事件は社会が共有すべき事件であることを考えると、あの事件の全貌をとらえるためにも評価すべきだ、と。

 当時の日本人にとってあれほどおぞましい事件はなかった。ほとんどの国民はあんな事件は二度と起こしてほしくないと思ったはずである。

 それにはどうすればいいか。確たる答などあるはずもないが、少なくとも、十四歳の少年を、あの異常な事件に向かわせた背景を知っておくべきだろう。しかし、少年法の壁に阻まれて、いまだに納得ができる説明がなされたとは思えない。

 たとえば、一九九七年十月十七日に神戸家庭裁判所が公表した『少年の処分決定要旨』にこんな記述がある。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2015年08月号

genre : ライフ 社会