著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、阿辻哲次さん(京都大学名誉教授・漢字文化研究所所長)です。
父はかつて小さな商社に勤めており、一時期は中国東北地方のハルピンに住んでいたことがあるらしい。
酒好きの父は晩酌で機嫌がよくなると、おさない兄と私に、中国での思い出を楽しげに話したものだった。話の中に「中国語」のフレーズや単語がいくつもまじるので、私は無邪気にも「おとうちゃんは中国語がペラペラだ」と信じて疑わなかったが、後に大学で中国語を勉強して、それがとんでもない「中国語」であると知った。
父は戦後に活版印刷業を営み、私は子どものころ、活字という形をとった漢字に囲まれていた。漢字の研究を志すようになったのはその影響である、とある本に書いたことがあるが、しかしそれよりもっと前から、父の目をフィルターとした中国との接触があったことも、進路を決めるきっかけのひとつかと今は考える。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2022年11月号